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私はこうしてお客様に落とされた 〜水無月そら・キャバ嬢(21歳)〜

 「あっ、そらちゃん? 今夜久しぶりに店に行こうと思うんだけど大丈夫?」
 「本当に? じゃあ、お店で待ってるね!」
 「わかった。久しぶりに会うからテンションあがって朝まで飲んじゃうかもね」

 嬉しそうに笑うお客さんの声を聞きながら、電話口で愛想笑いをするものの、正直、まったく嬉しいとは思わなかった。

 だって、長い時間、一緒に飲んで会話を楽しんでいたとしても、次に会うのが数カ月後となると、その人と過ごした時間なんて記憶の片隅へと消えてしまう。それなのに、「俺と話したこと忘れたの?」なんて言われても困るんだもん(キャバ嬢として覚えておけない私も悪いんだけどね…)。

 恋愛において、大切なのは、時間ではなく回数だと何かの雑誌で読んだことがある。

 確かに、言われてみれば、一日中一緒にいるよりも、ほんの数時間だけ一緒にいるときの方が、そのあとも常に相手に会いたいという気持ちを持ったままでいられる気がする。

 …でも、それってこの世界でも同じことが言えるよね。

 お店としてどうとか、お客様としてどうとかじゃなくて、ただ単純に、心を開きやすくなるし、時間を空けずにたくさん会える方が、私たちとしても、親近感が沸きやすいもん。

 だから、月に数回、「久しぶりだね」なんて言いながら顔を出して、何時間も居座られるよりも、週に数回、一時間だけでいいから会いに来てくれる方がよっぽど嬉しい。

 “ああ、もう帰っちゃうんだ…”

 って、なんだか切ない気持ちになっても、「また明日ね」の一言があると、それだけで嬉しくなっちゃうもん。

取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
http://ameblo.jp/lisa-ism9281/

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