7回1アウトまで中日打線をゼロに抑えていたが、5番・和田一浩に内角球をレフトスタンドに運ばれた。逆転2ランである。
原辰徳監督(53)は12三振を喫した打線を指して「執念というか、粘り強さが足らない」と怒っていたが、この日の敗戦は「7回裏のマウンド」を小野に託した時点で覚悟していたのではないだろうか。
7回表、小野に打順がまわってきた。6回まで投げ、被安打3無失点。「代打」という選択肢もあったはずだが、打席に向かわせた。つまり、ここで小野に続投を指示したのである。中日・和田に一発を食らう直前、「このあたりが限界」という空気はスタンドにも漂っていた。だが、ここで小野を交代させれば、たとえリリーフ陣が後続を退けても、7回表で代打を送らなかった“檄”が無意味になってしまう。このとき、原監督には小野に託す以外、選択肢はなかったのだ。
プロ野球解説者に「教育のための小野続投」の是非を聞いてみた。
「間違いではないと思う。1点しか挙げられなかった打線に責任がある」
同じことを投手出身のプロ野球解説者にぶつけてみると、ちょっと違うニュアンスが帰って来た。
「7回表に打順がまわってきたわけでしょ? 小野は気持ちの何処かで6回を投げきったときに『今日の役目は終わった』と思ったはず。投手って、そういうもんですよ。『終わった』と思っていたときに、『最後まで行け』と言われたら、頭では『ヨシッ!』と思っても、投球に微妙な影響が出るんですよね。適当なところで引っ込めて、勝ち星を付けさせた方が良かったと思う」
しかし、こうも語っていた。「リリーフ陣に不安があるから、小野を続投させるしかなかったんですよ」−−。
逆転2ランが出る直前、中日ベンチは4番に入った森野が犠打を決めている。この“イヤラシイ作戦”は、小野続投を見透かしての攻略法である。小野の立場から考えれば、こういった窮地を凌げば、たしかに「自信」にはなるだろう。しかし、投手出身のプロ野球解説者は「失敗した後の精神的ショックは大きいですよ〜」と言う。
山口から久保に繋ぐスタイルも確立しつつあるが、序盤戦はロメロがクローザーを務めていた。制球難のアルバラデホが通用しないことはキャンプのときから指摘されてきた。指揮官に「教育」の二文字を選択させたのは、『戦力補強の失敗』が遠因である。
GM制によるフロント強化には期待しているが、戦力補強の失敗は原監督が負うべき責任ではない。(スポーツライター・飯山満)