人気は超一流だが、肝心の実力の方は疑問符。というのが、今年の春のリーグ戦を終えての斎藤佑樹に対する外交辞令抜きの評価だ。早大の大先輩として折に触れ野球部を指導している、ヤクルト、西武監督として日本一に通算3度輝いている広岡達朗氏も「今のままでは厳しいだろう」と、プロでの大成にシビアな見方をしているという。
プロのスカウトの本音も「2年生までが最高だった。3年になってから140キロ台の後半のスピードもなかなか出なくなっている。早実時代は150キロ台も出たのに。今のままでは良くてもプロでは5、6勝しかできないだろう」と嘆き、伸び悩みは深刻な問題になっている。
「斎藤よりも抑え役の大石(達也=早大3年)の方が断然いい。ドラフト1位として大石の方が斎藤よりも多くの重複指名を受けるのではないか」という声さえ上がっている。
斎藤本人は「4年生になった時にどう評価されるか。その評価を、今よりも高くできるようにしたい」と宣言。ドラフトイヤーの来年に、甲子園でのハンカチ王子狂騒曲の再燃を期しているが、現状では斎藤株は暴落しているのがまぎれもない現実で今後ますます株が下がる危険性もある。
そんな中で斎藤獲りに執着しているのが巨人だ。リーグ3連覇、7年ぶりの日本一奪回を果たしたが、投手陣はゴンザレス、グライシンガー、オビスポの先発三本柱、抑えもクルーンと外国人投手頼み。日本人で内海、東野らがいるが決して万全ではない。「こんなことは巨人史上なかった。恥ずかしい」と巨人OBは吐き捨てている。それだけに、スター性のある斎藤がどうしても欲しいのだ。
しかし巨人は、来年のドラフトになったら今年の“二の舞い”を演じてしまうという危険性をはらんでいる。「今年は菊池だけ。あとは不作」というのに、巨人はホンダ・長野を1位指名。「2度も他球団がドラフト指名したのに、巨人命を貫いてくれた。これで1位指名しなかったら、罰が当たる」という理由だった。
「長野なら2位でも3位でも取れたのに。何球団競合しようと、1位は菊池でいくべきだった」と巨人OBは今でも大ブーイングだ。
菊池クジを引き当てた西武が、松坂大輔(現レッドソックス)獲得以来の球界の話題を独占している現状を見ればそれも当然だろう。
来年も希望枠復活まで画策している斎藤獲りに血まなこの巨人だが、ドラフトになったら、他球団は斎藤にソッポ。巨人だけが必死になっていたという“笑撃”のドラマが演じられるかもしれない。「今年と違って来年のドラフトは大豊作」とスカウトたちが口をそろえるのだから。
◎22日「U-26プロ代表戦」は“踏み絵”
22日、東京ドームで行われるU-26プロ野球選手と大学日本代表チームの一戦には、プロ野球から今年巨人優勝に貢献した坂本勇人、亀井義行、松本哲也をはじめ、日本ハム“未完のスラッガー”中田翔らが参加する。
大学代表の柱は当然、人気ナンバーワン早大の斎藤佑樹と亜大の東浜巨が迎え討つことになる。中でも斎藤は来季ドラフトの超目玉だけにプロスカウトの目が集中することになる。
ここにきて、ヤクルトなどは球団を挙げて「全スカウトを集結させる。どうしても神宮のスターが欲しいからね」と臨戦態勢を敷いている。3年生になって球威も落ちてきたといわれる斎藤だが、やはり“ここ一番に強い”怪物性をもっているだけに、その一挙手一投足は見逃せない。
坂本、亀井といった巨人の主力を相手にキリキリ舞いさせるシーンでもあれば評価ランプは「プロ当確」がつくだろう。
しかし、これがウラ目に出た時の不安も当然抱えているが、斎藤にとっては来季ドラフトの“踏み絵”にもなる22日の一戦は人気に実力を裏打ちさせる主要なポイント。“王子”をめぐる争奪戦が今季の菊池雄星(花巻東)を上回るものになるか注目だ。