search
とじる
トップ > トレンド > 第二次世界内戦のお知らせ

第二次世界内戦のお知らせ

 1月22日(土)午後6時30分からリブロ池袋本店にて、限界小説研究会による評論書『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』(2010/12/2・南雲堂・税込2,625円)の刊行記念トークショー第2弾『ポスト9.11のハリウッド映画と日本映画』が行われる。出演者は渡邉大輔さん、三浦哲哉さん、佐々木友輔さん、藤田直哉さん。

 限界小説研究会は、前著『社会は存在しない −セカイ系文化論』において、ゼロ年代(2000年-2009年)に発表されてきた様々な分野のサブカルチャー表現に共通する「セカイ系」を肯定的に考察した。それは宇野常寛さんが『ゼロ年代の想像力』で「セカイ系」を「古い想像力」として批判したことへの反論であることが、序文や笠井潔さんの論文を皮切りに随所で明言されている。

 「セカイ系」とは「君と僕」の小規模な関係と「世界の危機」や「世界の終わり」といった大規模な問題が、途中にあるはずの「社会」をすっとばして結合してしまうような表現形式を指す。「セカイ系」すなわち「アキバ系のオタク的想像力」と言い換えることもできる。そしてそれは、ゼロ年代のあらゆる社会状況を象徴するものであった。

 別にオタクが誰よりも偉いという話ではなく、マンガ・アニメ・ゲームといったアキバ系文化には、よりダイレクトに社会状況の本質が反映されやすいということ。ゼロ年代にベストセラーとなった東浩紀さんの『動物化するポストモダン』でも、そのように位置づけられている。そして宇野さんの「セカイ系」批判は、東さんへのアンチテーゼの側面が強い。

 宇野さんが「セカイ系」を捨てるかわりに必要と説いた「決断主義」を、笠井さんは「それこそ1930年代頃に使い古された戦時下の思想の回帰に過ぎない」と断言。秩序が崩壊したポストモダン社会において、生きるために闘わざるを得なくなった「決断主義」は「バトル的セカイ系」であって、社会との関係を喪失した「ひきこもり的セカイ系」とは双子のようなものであると。

 そしてその「決断主義」を迫られるような「例外社会」は、これから先の2010年代以降に顕著になっていくが、そこでの「決断」は推奨されるようなものではなく、たとえば通り魔などの形として現れてしまう。社会と関係を持てずに引きこもるのとは逆に、社会との関係を断ち切ろうとする、セカイ系の悪しき側面として。

 それを象徴する最たる事件が、9.11テロだった。それ以降の戦争は、世界大戦など大がかりなものから、対テロ戦争としての「世界内戦」に変質した。日常に潜む「世界内戦」は暴力によるものばかりではなく、経済格差やコミュニケーション不全に起因する、貧困やイジメの問題も含まれる。

 その状況の変化はマンガ・アニメ・ゲームにおける戦争像にも反映されると同時に、ドキュメンタリー風の「手ブレ映画」にも影響を及ぼしたと考察される。それらは大規模なスペクタクル映画へのカウンターとして増えたと見られていたが、それだけではなく「セカイ系」から「世界内戦」に変わりゆく社会状況に促されてきたものであると。

 その「映画における世界内戦」について『サブカルチャー戦争』で論じたのが、今回の出演者でもある渡邉さんと藤田さん。佐々木さんは映像作家で、三浦さんは映画や表象文化論の研究者。渡邉さんと藤田さんは、三浦さんが編集委員をしている映画批評サイト「flowerwild」にも寄稿している。また佐々木さんの作品上映に際しトークショーを行ったこともある。映画に関する議論を繰り返してきただけに、熟成された濃密なトークが期待できる。

 藤田さんと三浦さんは佐々木さんの映画『夢ばかり、眠りはない』や『新景カサネガフチ』に比べ、より実験的な『彁(タカ) ghosts』を評価しているようだ。一方で藤田さんは『彁 ghosts』は一般受けしないから『カサネガフチ』の方が映画としては洗練されているとも話している。僕は佐々木さんの映画を3本とも観ているので、この辺りの話も気になるところだ。

 手ブレ映像や前衛的な編集技法を駆使した、アヴァンギャルドかつポップな佐々木監督の映画は「風景映画」とも呼ばれる。この方法論は、社会学者の宮台真司さんにインスパイヤされているそうである。限界小説研究会が敵視した『ゼロ年代の想像力』も宮台さんの影響化にあり、そういう意味では敵と味方が入り乱れたパラレルな関係にあるようにも思えて面白い。

 議論をバトルと捉えれば、ある意味このイベント自体も「世界内戦」の現場である。刊行記念2度目のトークショーすなわち「第二次世界内戦」。このトークショーをグラウンド・ゼロとしたセカンド・インパクトによって、新たなる戦後の到来を体感することだろう。そしてその先の「第三次世界内戦」は、君と僕の終わりなき日常に蔓延っている。(工藤伸一)

リブロ公式サイト『ポスト9.11のハリウッド映画と日本映画』トークショー
http://www.libro.jp/news/archive/001567.php
日時:2011年1月22日(土)午後6時30分〜
会場:西武池袋本店別館9階池袋コミュニティ・カレッジ28番教室
参加チケット:リブロ池袋本店書籍館地下1階リファレンスカウンター
入場料:500円(税込)定員:70名
お問合せ:リブロ池袋本店 (電話予約も可能)

限界小説研究会BLOG
http://ameblo.jp/genkaiken/

映画批評サイト「flowerwild」
http://www.flowerwild.net/

渡邉大輔ブログ「imagosphere notes」
http://d.hatena.ne.jp/daisukewatanabe1982

佐々木友輔「総合ウェブサイト」
http://qspds996.com

藤田直哉ブログ「the deconstruKction of right」
http://d.hatena.ne.jp/naoya_fujita/

関連記事


トレンド→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

トレンド→

もっと見る→

注目タグ