さて、そうした店から遠のいた客を、もう一度、来店してもらう工夫をキャバクラ嬢たちはどのようにしているのでしょうか。
お客の好みを覚えておいて、いかにも自分がその好みにあてはまっているかのような営業メールをすることはよくありますよね。先日もそうしたメールが来ていました。
「154センチのKです。覚えていますか? これはきっと運命の出会いですよね」
なぜ、わざわざ身長を書いているのでしょうか。それは、私が会話の中で、「154センチの女性がいい」と言っていたからです。なぜ、その身長がよいのかといえば、私の身長(169センチ)から15センチを引いた数字だからです。
とはいっても、154センチ前後の女性でなければ付き合えないとか、好きにならないわけではありません。実際、140センチ台の人とも付き合ったことがありますし、160センチ台の人を好きになったこともあります。ただ、15センチ台の女性が多かったことは事実かもしれません。
しかし、私とて、いくら154センチだからといって、何度も会っていないキャバ嬢からの「運命の出会いかも」のようなメールだけでは、また会ってみたいとは思えないのです。もっと、その人がわかるような営業をしてほしいものです。
別のキャバ嬢からのメールでは、こんなものがありました。
「アニメが好きなんですか?」
これは、指名嬢のC嬢(19)から、私の話を聞いたA嬢(20)からのメールでした。A嬢は、お店に行ったときに、遠くから眺めているとかわいいな、と思っていたのですが、横の席に着いたときには、かわいいというよりは不思議ちゃんキャラでした。そのため、私も覚えていました。「アニメが好きです」とレスをすると、
「『涼宮ハルヒの消失』は観ましたか?」
とのメールが届く。もうすでに2回観ているために、その旨のメールを送ると、
「あ、そうなんですか。残念です」
と、もし、まだ観ていなければ一緒に行こうと思っていたようです。「ハルヒ」が好きなキャバ嬢って意外に多いのかもしれませんね。でも、そんなに多いのなら、こっちこそ、「涼宮ハルヒ」シリーズのラノベ(ライトノベル)を全部読んで、もう一度、テレビシリーズをチェックしようかな、って思ってしまいます。何回観れば気が済むのか、私は…。
とは言っても、「ハルヒ」が通じるのは2二十歳前後。20代中盤の嬢たちには、何のことかさっぱりわからないらしい。説明してもわからない人が多いこと。そんなに説明してしまうと、私が「ハルヒ」オタクのように見られてしまいますが、違います。だって、「長門有希」のフィギュアくらいしか、家にありませんし(って、それは…)。
でも、やっぱり、身長とか、趣味とかも大事ですが、相性や雰囲気が合うのが一番です。ある日、新宿ゴールデン街で飲んでいて、別の店を探していたら、後ろから視線を感じたのです。振り返ると、M嬢(22)が自転車を押しながら歩いていました。
「え? こんな時間に、なぜここに?」
どうやら、お客が少なかったために、金曜日の夜なのに、早く上がらされたというのです。せっかくなので、ゴールデン街で飲み、その後、2丁目にも行きました.このM嬢は比較的、雰囲気も好きで、話しやすいのです。しかも「母子家庭」なので、私のハートを揺さぶります。
さらに、こんな偶然で朝まで飲み明かすとは、きっと何かある(に違いない!)。
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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