最近では12月7日、同社の名古屋主管支店管内の事業所で委託契約を結んでいた60代の委託配達員が、メール便1600通を配達せず、このうち1300通を廃棄していたことが明らかになった。08年5月から11年10月に法人から依頼を受けたメール便だった。これは、11月29日に名古屋市環境局瑞穂環境事業所から「収集したごみ袋の中にダイレクトメールが入っている」との連絡があり、発覚したもので、該当地域は同市瑞穂区。同社ではその配達員との委託契約を11月末に解除したという。
11月には同社栃木主管支店管下の事業所、益子・烏山支店及び宇都宮さくら支店にて、同社社員が約960通のメール便を滞留させ、そのうち約700通を裁断や焼却処分していた事実が社内調査で判明している。対象は06年9月から11年8月に法人から依頼されたもので、該当地域は宇都宮市など。
9月には秋田市内を担当していた元委託配達員が、04年8月から07年12月にメール便3364通を配達せず倉庫に放置していたことが、当該男性の死亡後に明らかになった。これも、法人から出されたメール便で、同社の集配管理システム上では配達済みとされていた。
昨年11月には京都主管支店管下の亀岡支店の委託配達員がメール便約21000通を配達せず、一部を焼却処分していたことを同社は公表した。その際、同社では「弊社では、昨年(09年)11月にクロネコメール便の未配達が発覚し、全社挙げて再発防止に取り組んで参りましたが、そうしたなかで新たな滞留事案がわずか1年で発生したことに対し、改めて事の重大性を認識するとともに猛省いたしております。今後は、再発防止委員会のもと、再発防止策を徹底し全社一丸となって信頼回復に努めてまいります」と声明を出している。
にもかかわらず、なぜ再発事故が相次ぐのか。同社は再発防止に本当に努力しているのだろうか。かつて、東京都内で同社の委託配達員を務めていたというAさん(58)は、「社員が起こした事故もあるようですが、ほとんどが委託配達員によるものです。委託配達員は給料制ではなく、出来高制です。その条件が良ければいいのですが、1通配達して報酬は20円ほど。せいぜい1日100通ほどしか配達できません。つまり、1日がんばっても2000円くらいにしかなりません。それでいて、雨の日も風の日も、バイクや自転車で1軒1軒配らなければなりませんので、体力的にはかなりきついのです。正直、バカらしくてやってられません。さすがに私は音を上げて1年で辞めました。未配達や廃棄は悪いことですが、気持ちは分からぬでもありません。今も大方、委託配達員が配っているケースが多いと聞きます。こういった事故を防止するには委託配達員の報酬を上げるか、時給や月給で保障されている社員やアルバイトに任せるしかありません」と話す。
どうやら、その根本的な原因は配達体制にあるようだ。民間から参入し、郵政事業から仕事を奪ったのはいいが、責任を全うできないのでは話にならない。たとえ料金が安くても、ちゃんと届く保証がなければ、客側は郵便局から出すしかないだろう。同社には管理・配達体制をしっかり見直して、真に再発防止に努めてもらいたいものだ。
(蔵元英二)