注目は背番号『18』の杉浦稔大(22=國學院大)だ。第一クールを終えた時点で、2度プルペン入りしているが、首脳陣の指示で変化球ナシの投げ込みとなった。まず、最初のブルペン入りとなった2月1日だが、ブルペン捕手は常に『右バッターのアウトコース低め』を要求。だが、捕手の構えたところに行かないボールも多く、プロの練習レベルに苦しんでいるようにも見受けられた。9日は打撃投手として登板。打者2人・約40球を投げたが、ヒット性の当たりを量産されている。この日も、真っ直ぐ一本の投球だった。
「投手の基本はストレート。変化球主体の技巧派投手も、真っ直ぐにキレがないと変化球も生きて来ない。杉浦にはまず、『ストレートのキレ』を磨いてもらおうとしているのでしょう」(投手出身のプロ野球解説者)
将来のため、その土台作りをさせているというわけか。首脳陣はこのエース候補が「開幕に間に合わなくてもいい」と判断しているのかもしれない。
対照的に実戦形式の投球練習を続けていたのが、クリス・ナーブソン(32)だ。左のオーバーハンドで、緩いチェンジアップ系の変化球が武器と紹介されていたが、ストレートとほぼ同じ速度の変化球もあり、そちらの方が脅威だと思った。スライダーか、カットボールだろう。時計の『4時の方向』に鋭く曲がる変化球がある。右打者の目線で言えば、膝元に食い込んでくるような軌道で、バットに当てるのも厄介だと思われる。このナーブソンは2ケタの計算も立つのではないか…。有名なメジャー投手と同姓同名のクリス・カーペンター(28=右投右打)も長身からオーバーハンドで投げ下ろして来る。クローザー候補だが、近年、セ・リーグで結果を残しているリリーバーは、『ボールのキレ』と、変化球で『ゴロ・アウト』を誘うタイプが多くなった。剛速球でねじ伏せるリリーバーが少なくなってきただけに、ヤクルトの渉外は面白い投手を見つけてきたと思った。ボールが全体的に高いのがちょっと気になるが、最終回の1イニング限定なら、問題はないだろう。
新しい技巧派左腕もいる。ドラフト4位の岩橋慶侍(22=京産大)はゆっくりとした投球フォームで、最後にスナップを利かせるような投げ方。真っ直ぐは決して速くないのだが、手元で伸びて来る。こういうストレートは打ちにくいはず。内外角のギリギリを狙って来るようなコントロールは感じられなかったが、投球テンポが良い。ひょっとしたら、スロー調整の杉浦よりも先に『プロ初勝利』を挙げるのではないだろうか。
野手では、ドラフト2位の西浦直亨(22=法政大)が良い。守備範囲の広さと肩の強さは前評判通りで、遊撃の守備に入ったときの『4-6-3』の併殺プレーでの動きも速い。4年目の山田哲人(22)が昨季に続き、二塁での守備練習を受けていたので、首脳陣はこの西浦に『スタメン』を託す予定なのだろう。
確実に計算の立つ投打の新戦力を得た。そう言い切って良さそうである。