まず優勝から一夜明けての心境について「まだ一夜しか経っていない。たが、あと2週間でIWGPヘビー級という大切なベルトに挑戦することとなった。自分は史上初のイギリス人IWGPヘビー級チャンピオンとなる」といきなり戴冠宣言。さらに「海外のプロレスファンは、誰もこの勝利に驚いていない。なぜならイギリス、アメリカ、アイスランド、北極、北極クマだろうと、サンタクロースだろうと、北半球にいるみんな、自分の強さを知っているからだ」と語ると「サンタクロースのところは必ず書いてくれよ(笑)」と笑顔で報道陣に注文した。
続けて報道陣から、オカダのように体格差がある選手に対して関節技は通用するのか?という質問が飛ぶと「『いえ。サブミッションで勝てるとは思えません』と答えるんだったら、実家に帰った方がいいんじゃないかと思う。自分はオカダを倒すだけでなく、サブミッション、ピンフォール、何でもいい。自分がフィニッシュをして、オカダをIWGPヘビー級王座から陥落させる。それもギブアップでな。そして、イギリス人として初めてのIWGPヘビー級チャンピオンというのが記憶に残るはずだ。新日本プロレスはもともとサブミッションをベースとしているプロレスラーが多かったのに、どうしたんだ?」と元来、新日本のベースだったはずのストロングスタイルについても言及。「ストロングスタイルはボクのことだよ。ボクは新弟子として新日本プロレスの道場でトレーニングをしていたわけではないが、このスリムでブリットなボクの方がストロングスタイルとは何かを理解しているんじゃないかと思っている。誰がそんなボクに挑戦できるのかな?オカダ?メキシカンサブミッションスタイル?俺こそがストロングスタイルなんだ」とまで言い切った。
また『ニュージャパンカップ』からザックのマネージャーとしてサポートしているTAKAみちのくの存在について質問すると「TAKAは自分にとって、先見の明のある占い師のような人だ。で、手相を見てくれたんだけど『ザックが優勝するよ』と言ってくれた。自分の後押しをしてくれる人だ。彼も90年代、ジュニアヘビー級の選手として1人で海外に出て行って、成功を収めたという観点からしても、自分のことを一番理解してくれている人である。いま、TAKAはハンサムで若いブリットボーイをボニー&クライドのようにサポートしてくれている。TAKAとは初めて一緒にこのツアーに参戦したが、初めての『NJC』でトロフィーを獲得することができた。これだけ大きなことを成し遂げたのならば、次はどんなことが起こるのだろうと楽しみになるよね。次はもしかしたら、IWGPヘビー級チャンピオンシップなんじゃないのかなと思うよ。なぜならば、『NJC』が始まる前、自分は“ダークホース”だった。いや、ダークホースとも言われないぐらい、誰にも期待されていない選手だった。でも、TAKAは自分を信じて、自分が勝てるということを知っていてくれた。そして、勝つことができた」と感謝の気持ちを口にしていた。
「英国もサブミッションレスリングというものが根底に広がっている。それを自分は戻したいと思っている。アメリカのいま流行しているカッコつけただけのカメラ目線をキメて、Tシャツを売るだけのプロレスではなく、自分を見てほしい。こんなスキニージーンズをはいたオシャレ男子が、日本と英国の歴史あるプロレスのスタイルというものを持ち帰りたいと思う。そして、ブライアン・イーノを知ってるか? アンビエント・ミュージックを創り上げた人だけど、自分は彼のように古き良きものから新しいものを創り上げる。そういう人になりたい」
ザックがここまで自身のことについて話をしたのは、プロレスリング・ノアに留学していた時も含めて初めてではないだろうか。カール・ゴッチ、ローラン・ボック、ダイナマイト・キッド、初代ブラックタイガー、スティーブ・ライト、ピート・ロバーツ、トニー・セント・クレア、デーブ・フィンレー、スティーブン・リーガルら、グラウンドを得意とするヨーロッパの選手は過去何人も“ストロングスタイル”を求めて新日本のマットに上がり、アントニオ猪木や坂口征二、藤波辰爾、長州力、闘魂三銃士といった日本勢を苦しめてきた。ザックの快進撃を見ていると歴史は繰り返すと思わざるを得ない。
会見の最後には「ベルトを英国に持ち帰る」と改めて王座奪取を宣言。「欧州で初めてのIWGPヘビー級王座の防衛戦をやりたい。IWGPの“I”というのはインターナショナルの意味だが、このベルトは常に日本にあるもの。新日本プロレスは世界最高の団体だと思っている。でも自分は世界中を転戦している。もし、このベルトと団体をこれ以上に拡大したいのなら、それをやるのは自分しかいない」とインターナショナルな防衛ロードプランも明らかにした。
チャンピオンのオカダは現在10回連続防衛中で、棚橋が保持している防衛記録11回に王手をかけている“絶対”王者。ザックはそんな“絶対”王者からタップアウトもしくは、関節絡みでオカダの動きを止めてレフェリーストップ勝ちを収めることができるのか?4.1両国大会もザックから目が離せない。
取材・文・写真 / どら増田