まるで昨年のセイウンワンダーの再現を見るかのようだった。道中は最後方を進んだ1番人気のシンメイフジが直線、外から豪快に伸びて、先に抜け出していたフローライゼを4分の3馬身差し切った。
「去年といっしょやったね。確かな能力を感じた」と見事に連覇を達成した岩田騎手。主戦場の北海道からスポット参戦。この馬に乗ったのはレース直前の返し馬が初めてという、まったくのテン乗りで答えを出すあたりはさすが百戦錬磨の仕事人だ。
それでも、道中は少しヒヤッとしたという。「スタートして進んで行けへんねん。これは腹を決めて直線勝負にかけるしかないなと」。4角手前で気合をつけられると、上がり3F32秒9の2歳馬離れした末脚を繰り出し、力強く伸びた。
「返し馬で物見をしていたから、そこだけ気をつけていた。直線では案の定、遊んで、観客席を見ていたね。でも、それだけ余裕があったということ。無事にいってくれればいいところを狙えそうだよ」
この夏は函館2歳Sをステラリードで制しており、まさに両手に花といったところ。「いい夏になったね。(1番人気のアンライバルドで12着に敗れた)日本ダービーの悔しさをバネにしてやってきた。秋も頑張りたい」と笑顔で締めた。
一方、「物おじしなくて、どっしりしている。だから、あの脚が使えるんだろう」とは安田景助手。「おとなしいし、普段の調教なんかもすごくやりやすい。牝馬らしくないのがいいところ。入厩当初から完成度が高くて、適性は短いところかと思っていたが、道中であれだけ遊びがあれば、距離が延びても大丈夫そうだね」
この後は放牧でひと息入れて実りの秋に備える。阪神JF、来春の牝馬クラシックの有力候補として迎える次走は目が離せない。