ディープインパクトVSその他大勢。春はこのひと言で片付けることができた古馬中長距離路線だが、秋競馬は周知の通り、ディープが仏・凱旋門賞に挑戦した関係で、その他大勢による戦国絵巻の様相を呈している。
無論、この後に続く天皇賞・秋を狙っている各陣営においては、鬼の居ぬ間に盾の金看板をかっさらおうと腹黒く皮算用しているに違いない(?)。イコール今年の毎日王冠は、例年以上に盾への“予行練習”の色合いが強い。一部の陣営を除いては…。
その一部陣営とは杉浦厩舎である。スタンバイさせているテレグノシスは、7歳も秋。そろそろ引退の2文字がチラつく年を迎えている。
長いようで短い競走馬生活。チャレンジ精神で王道を突き進ませるのも美学だが、杉浦師が選択したのは「名より実」である。
「GIでもやれる力はまだ残っているが、善戦はできても勝ち切れるかとなると…」。この後は天皇賞には向かわず、中1週で富士S(GIII 芝1600m)を予定しているという師からは、何とかもうひとつ重賞を勝たせてやりたいと願う親心が見え隠れする。
もっとも、条件としては、「馬場にヨダレがタレただけでもダメ」という大の“道悪嫌い”。開幕週の絶好馬場のなか行われる毎日王冠が、よりチャンスが大きいことは師自身が一番よく知っている。現実に、このレースは一昨年の勝ち馬であり、昨年も2着と抜群の相性を誇る。逆にこの機を逃せば、東京の開幕馬場は来春までオアズケ。年齢的な部分も含めると、これが事実上のラストチャンスになるかもしれないのだ。
中間は馬なり中心ながら、丹念に乗り込みを消化。牡馬にしては仕上がり早のタイプでもあり、「短期放牧明けになるが、前走よりもむしろ状態はいいぐらい」と師が語れば、最終追い切りにまたがった大野騎手も「併走馬をスッと離してくれた。あれだけ反応がいいのは体が良くなっている証拠でしょう。息の入りも良かった」と能力全開を約束した。
その前走・関屋記念は3着ながらも、繰り出した末脚は出色の上がり3F33秒1。ローカルのGIIIとはいえ、これだけのパフォーマンスが見せられれば、切れ味に衰えは見られない。
東京は前述のほか、NHKマイルC(GI)など全5勝を挙げているスペシャリスト。中央場所に戻るといっても、ディープ不在ですでに気持ちが先に向いている面々ばかりなら、自慢の豪脚がさく裂しても決して不思議ではない。