会見では31日の大会に出場するONEの契約選手、全20選手が登壇した他、チャトリ・シットヨートン会長兼CEO、秦“アンディ”英之ジャパン代表もスピーチを行った。会場には海外メディアをはじめ、国内のマスコミ、そして国内外の関係者、ファンが多数詰めかけ、100名を超え会場に入りきらないほどの盛況ぶり。特にアジア圏のマスコミが多く見られた。国際色豊かな雰囲気の中、タイ人と日本人のハーフであるチャトリCEOが、ONEの現状と将来のビジョンについて、英語に時おり日本語を混ぜながら熱弁した。
「来年は4大会。将来的には12大会やりたい。価値観、ストーリー、ヒーロー。この全てを使って私たちのヒーローを応援してもらいたい」
今大会はあくまでも日本進出の布石でしかない。東京オリンピックで日本が注目される来年は4大会を予定しているが、「東京以外の街でやることもある」と地方開催にも意欲的だ。
というのもONEはアメリカのプロレス団体WWEや、総合格闘技団体UFCのように、ライブ収益ではなく、放映権料を中心に売り上げを伸ばしている。これに関しては「世界一のNFLを超えたい」と鼻息も荒い。今大会もテレビ東京、AbemaTV、そして電通が完全にバックアップ。広報面ではサニーサイドアップが協力するなど、盤石な体制を敷いている。JRや東京メトロの駅構内や車内で流している電子広告は、代理店による仕掛け。このように各開催国でさまざまな巨大企業とパートナーシップを結びながら、わずか7年で世界に通用する団体になったのだからすごい。
「私たちは地球上で最大の団体を目指す。今回の大会は史上最高の大会になるが、これはまだ始まりにすぎない。憎悪に打ち勝ち、新しい時代を築いていく」
今大会のタイトルを『A NEW ERA-新時代-』とし、武道の国である日本を選んだ意味について、チャトリCEOはこのように話した。
日本では修斗、パンクラスと提携を結んだがこれに関しては「ここ20年、日本の格闘技が縮小されたのは悲しかった。でもしっかりとしたリーダーシップと投資があればまた成長する。われわれはアマチュアにも投資します」と強調。「修斗とパンクラスの王者がONEで闘うことができるのはいいこと。今、十分な環境を得られる格闘技団体は世界でUFCとONEだけ。ONEはUFCに引けを取らない報酬をプロ選手に払うことができます。単なる契約ではありません。私たちはファミリーだと思ってます」と契約した選手は責任を持って起用していく方針を明らかにした。
WWEが選手をスーパースターと呼ぶように、ONEでは選手をヒーローと呼ぶ。チャトリCEO自身も34年間トレーニングをし続けていることもあり、「ビジネスマンとしてではなく、ヒーローたちの価値観を大切にしたい」という。現在はアメリカでの開催も交渉中だそうで、そんなチャトリCEOの方向性を理解したヒーローたちは、口をそろえたかのように、ONEへの感謝の言葉を口にしていたのが印象的だった。
31日の両国大会でついにベールを脱ぐONEチャンピオンシップ。日本の団体が単なる黒船だと思っていたら痛い思いをするかもしれない。この団体には大和魂がある。第三極としてスタイルを確立すれば日本のマーケットでもトップを獲る可能性は十分にある。
取材・文・写真 / どら増田