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夜を棄てたキャバ嬢〜体臭に悩んでいた彩香〜

 人間が対峙する際に好印象を与えるためには身だしなみや態度だけでなく、体から漂う臭いも重要となる。どれほどルックスがタイプであったとしても自身が不快な臭いだと感じる相手には評価は一転する。キャバクラにおいても、嬢が客の体臭に嫌悪感を抱いてしまうことは珍しくないが、彩香(24歳・仮名)の場合は逆に自分の体から放たれる臭いを気にしていた。

 「私は昔から恋人ができてもすぐに別れを切り出されていたんですよね。原因もまったくわからなくて」

 彩香は街を歩けば芸能関係の事務所などからスカウトされることもあるほど、顔立ちは整っていた。そのため客からも指名されることは多かったが、しばらくすると皆離れていったという。特に性格にも問題があるというわけではなかった。

 「ある時、お客さんとフェチの話になったとき“彩香ちゃんの臭いは強烈だもんねぇ。でも俺は臭いフェチだから大丈夫だよ”と突然言われたんです」

 その時初めて彩香は自分の体臭のことを知った。それからは店の中ではもちろん電車など、人が近くにいる場所では、相手からどのように思われているのかが気になり、落ち着かなくなった。そのため彼女はキャバクラ嬢を続けられなくなる。

 「それから少しして店は辞めてしまいました。女の子やスタッフ達が私と接する時の微妙な距離感の原因もわかりましたし」

 彩香は店を辞めてから、人と接することを遮断し引きこもりのような生活を送っていたという。しかしある時、このままではいけないと感じた彼女は思い切って専門の医師に相談することを選ぶ。

 「この悩みを病院で打ち明けるのは勇気が入りましたね。でもそのおかげで医者から、体臭にはミョウバンを塗り付けるといいと教えてもらえました」

 ミョウバンはカリウムやアンモニウム、アルミニュウム等の金属が結晶化したものである。そのミョウバンには殺菌作用の効果があるので、制汗や消臭防止として使われているのだという。彩香はミョウバンスプレーを脇に吹きかけることを習慣とし、体臭の悩みを克服した。現在は外にも出かけられるようになり、都内の雑貨屋で働いているという。
(文・佐々木栄蔵)

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