経験値の浅い若手が重圧に負け、楽勝ムードも一変してしまうかもしれない。だが、それくらいの修羅場を経験させなければ、育たないという金本流の育成持論なのである。
「9回に若手投手を登板させるのは、呉昇桓の残留を前提とした構想でした」(球界関係者)
阪神渉外担当は、呉昇桓に代わる新たなクローザー候補を探している。
一部報道によれば、先発ローテーションの一角であるメッセンジャーのクローザー転向も検討されているという。メッセンジャーはかつて奪三振のタイトルも獲得した。連投のできるタイプでもあり、適任かもしれないが、阪神には「5番手以降の先発投手が脆い」という弱点がある。メッセンジャーをクローザーに配置換えすれば、計算の立ちにくい先発投手が4番手以降になってしまう。
新外国人投手が安定しないようならば、4季ぶりに帰還した藤川球児との併用も検討しなければならないだろう。
金本監督が考えていた継投策は、主に3パターン。1つはごく普通のパターンで、先発投手からセットアッパーを挟んで、最後はクローザーで締めくくるというもの。この基本的な継投のほかに、先発投手からいきなりクローザーに繋ぐケースと、前述の若手を抜てきしてクローザーを休ませる策も考えていた。
投手出身のプロ野球解説者がこう言う。
「2つ目は『消滅』と見ていい。阪神だけではないが、昨今の救援投手はセットアッパー、クローザーのポジショニングを問わず、『イニング跨ぎ』が苦手になっている。金本監督の先発投手からいきなりクローザーに繋ぐ継投策は、イニング跨ぎを苦にしない呉昇桓の残留を想定したものであって、新外国人投手には同様のケースを期待しないほうがいい。メジャーリーグを経験したクローザーは『イニング跨ぎ』をやりたがらないので」
メジャーリーグを経験したクローザーは契約段階でイニング跨ぎを拒否する者が多い。また、連投に関しても「5試合続けて投げさせない」といった条件も突き付けてくる。
賭博疑惑による呉昇桓の退団は、もっとも大きい痛手となるだろう。
「FA補強した高橋聡文(32=前中日)をクローザーで使ってくるのではないか」(前出・プロ野球解説者)
考えようによっては、若手に修羅場を経験させる機会が増え、投手陣が逞しくなっていく。金本監督は目先の勝利にもこだわると話していたが、将来を見据えた若手登用なら、ファンも許してくれるのではないだろうか。