てづくり商品のみを販売する「青空個展」は2009年から開催が始まった。現在は、「世田谷観音」はじめ複数の会場で、定期開催されている。野外マーケットのため雨天中止の決まりだが、中止になった実績はなく、順延が一度ある。
同実行委員会の高村有美(たかむらともみ・32)さんは、「青空個展」の趣旨を「ひとつひとつの物を大切にして、人と人との距離が近いコミュニケーションの場所を作ること」と語る。
「青空個展」では毎回出展者を募集している。今回の応募は、2月の段階で、定員に達したため締め切られた。3月11日の東日本大震災発生後、開催の見極めは直前まで慎重に検討された。当日は、約70の出展者が店を並べた。午前10時の開始以降、地元の住民を中心に来場し、昼頃には、遠方からの来場者も含め賑わいを見せた。高村さんは、「会場の協力があり、気持ちを明るく持つためにも最終的に開催した」と述べた。
歴史的には、交通の要所に多くあり、人々の生活のよりどころである神社仏閣でのマーケット開催は珍しいことではないが、近年は、大衆消費社会や、食の安全性や、人間関係の希薄化への疑問から、境内で開催される「寺社マルシェ」と呼ばれるマーケットが注目を集めているという。
ビースのアクセサリーを出展した都内に住む千葉真知子さん(31)は、夫の家族が仙台市で被災した。連絡は取れており、話を聞くたびに悲痛している。今回の出展は直前まで悩んだ。電力を多く必要とする屋内イベントではなく、家族からの「地震のためにやめるのではなく、日常を送ってほしい」という言葉にも勇気づけられ、出展を決意した。
てづくりのケーキを出展した越江あづなさん(32)は、「毎月楽しみに来てくださる常連のお客様もいるので、がんばってやっています」という。葉書やレターセットを二人で出展した飲食業のぬまたあやこさん(29)とその友人(28)は、働きながらてづくり商品を作り、今回のようなマーケットに出展している。「青空市なので、来てくれた人と直に話しているだけで気持ちがいい」(ぬまたさん)
一般来場者の50代と20代の女性の親子二人は、見ず知らずの出展者との間に場所や物という一つのきっかけから会話が生まれることが楽しいという。震災前に『渋谷てづくり市』(会場・代々木八幡宮)に出展していた人と、今回会うことができ安心していた。
「青空個展」では、会場に募金箱を設置している。一般の支援者・東京リサイクル運動市民の会(東京都中野区)と連携し、チャリティー活動を進めている。(竹内みちまろ)