昨年は、変化が求められた。かつてはバラエティ王国と呼ばれたフジテレビが、看板番組の打ち切りを断行したからだ。前身番組の『とんねるずのみなさんのおかげです』時代から数えると、30年以上もレギュラー枠を勝ち取っていた『とんねるずのみなさんのおかげでした』が終了。ナインティナインらで20年以上続いた『めちゃ×2イケてるッ!』も、その使命を全うした。
さらに、中山秀征らの『ウチくる!?』も、およそ19年の歴史に幕。香取慎吾にとって唯一の地上波レギュラーだった『おじゃMAP!!』も終わった。ちなみに、同じく元SMAPの草なぎ剛も、テレビ朝日系の『「ぷっ」すま』が20年の節目を前に終わっている。これにより、ジャニーズ事務所を退所した元SMAPで地上波レギュラーを堅持しているのは、稲垣吾郎の『ゴロウ・デラックス』(TBS系)だけとなった(※草なぎは『ブラタモリ』=NHK総合のナレーションで声だけ出演)。
フジが大ナタを振ったことによる余波は、今年、新たなうねりとなりそうだ。肝は3つ挙げられる。一つに、東名阪の名阪(愛知と大阪)地方の強化だ。
愛知には女性アイドルグループでSKE48、TEAM SHACHI(チームしゃちほこ改め)、男性アイドルグループでBOYS AND MENがおり、1万人から3万人規模の大箱ライブを成功させた実績がある。お笑い業界に目を向けると、よしもとクリエイティブ・エージェンシーをはじめ、ワタナベエンターテインメント、ホリプロ、人力舎といった大手がローカルレギュラー枠をゲット。
さらに西へ進めば、大阪はよしもと芸人の独壇場。ダウンタウン(松本人志・浜田雅功それぞれ単独)、ナイナイ(岡村隆史のみ)、明石家さんま、笑福亭鶴瓶、雨上がり決死隊、今田耕司、東野幸冶、千原ジュニアほか、多くのベテラン勢がローカルレギュラーを抱えている。同時に、関ジャニ∞、ジャニーズWEST、なにわ男子(関西ジャニーズJr.)といった関西出身ジャニーズ勢も、ローカル番組で確固たるポジションを築いている。
二つめに挙げられるのは、インターネットテレビの台頭だ。稲垣、草なぎ、香取が、古巣・ジャニーズの息がかかっていない新天地としてAbemaTV、Amazon Prime Video、Amazon Music Unlimitedに光明を見出し、高い視聴者数を稼いでいる。彼らの場合は、SNSを駆使・連動させているのも勝因だ。
先のAmazon Prime Videoでは、松本、浜田、今田×東野がオリジナルコンテンツを抱えるなど、充実ラインナップが日進月歩で増加中。AbemaTVともに、地上波に勝るとも劣らないコンテンツの多さと、アウトローな内容が魅力だ。ネットニュースとなることが多いのも特色だ。
対する動画配信サービス・GYAO!には昨年、ジャニーズが初進出。木村拓哉、KinKi Kidsの堂本光一、堂本剛がそれぞれオリジナル新番組を抱えた。
最後の三つめは、NHKのバラエティ増強だ。“めちゃイケ”が終了した後、ナイナイ・岡村が初のNHKメイン司会となった『チコちゃんに叱られる!』は、5歳のチコちゃんのフレーズ「ボーッと生きてんじゃねーよ!」が、18年の『ユーキャン新語・流行語大賞』にノミネートされたほどの人気に。『第69回 NHK紅白歌合戦』にも出演した。
ほかにも、朝の情報生番組の『あさイチ』のメインMCに博多華丸・大吉が抜てき。ウッチャンナンチャン・内村光良らの『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』。くりぃむしちゅー・有田哲平の『有田Pおもてなす』ほか。タモリ、鶴瓶には安定のレギュラー番組があるが、志村けん、ビートたけし、松本が真剣にコント番組を作った歴史もある。業界視聴率が高い年に一度の『新春テレビ放談』シリーズ(19年は1月2日OA)は、同局も他局も斬りまくる忌憚なき特番だ。
これら三要素は19年、さらに幅を利かせること間違いなし。テレビ離れは著しいが、次代を創るのもテレビ。そう痛感できる今年であってほしい。
(伊藤雅奈子)