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『鋼の錬金術師』第26巻に見るハガレンの魅力

 荒川弘の漫画『鋼の錬金術師』の最新刊26巻が、8月12日に発売された。「ハガレン」の略称で親しまれる『鋼の錬金術師』は、最終回が掲載された『月刊少年ガンガン』7月号が完売するほどの人気を誇る。完結まで1巻を残すのみとなった第26巻では、最終決戦が佳境に入る。

 ハガレンは錬金術が使える架空の世界を舞台にした物語である。エドワード(エド)とアルフォンス(アル)のエルリック兄弟は、病気で亡くした母を錬金術で蘇らせようとして失敗する。エドワードは左足と右腕を失い、身体を失ったアルフォンスは魂を鎧に定着させた。身体を取り戻すために旅に出た兄弟は、人類を滅ぼす陰謀に直面する。
 ハガレンの魅力は物語性にある。人気のある連載漫画は商業的な意向から引き延ばされる傾向がある。しかし、ハガレンでは人気のある中で最終回を迎えたことを示すように、物語としてのまとまりを優先させた。
 人気のある限り連載を続ける作品ではないため、キャラクターも考え抜かれている。この巻での見どころは、七つの大罪を象徴するホムンクルスの一人・傲慢(プライド)を意味するセリム・ブラッドレイとの戦いである。セリムはエドと戦うが、意外な人物に邪魔される。

 その人物は、登場時から独特のポリシーを有していた悪役であった。その所業は道義的に決して許されるものではないが、彼には悪の魅力、悪の華というものがあった。その彼が単なるヤラレ役、強敵の引き立て役で終わってしまうことはもったいないと思っていたが、ここで活躍させる予想外の展開には舌を巻いた。
 彼は最後まで自らの美学に沿って行動した。もし彼が最後に改心して善人となる御都合主義的な展開ならば、彼の魅力を損なってしまっただろう。しかし、彼は最後までブレないまま、それでいながらエドの戦いに影響を及ぼし、エドを深く理解していた。
 集団主義的な日本社会では、他者に同調するか否定するかの両極端に走り、異なる個性として他者を理解するということが不得手な傾向がある。その点で自己の美学を保ちながら、相反する価値観の他者(エド)を理解できる彼は魅力的なキャラクターである。このようなキャラクターが物語を構成していることがハガレンの魅力である。

(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)

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