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近代オカルトのベースを創った『竹内文書』とは?

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 『竹内文書』がなければ、近代日本のオカルトシーンはさぞ退屈なものになっていたであろうと筆者は断言したい。別名『磯原文書』とも『天津教文書』 とも言われている同文書は、『カタカムナ文書』『上記(うえつふみ)』『秀真伝(ほつまのつたえ)』『東日流外三郡誌』『富士文献』と同様に、神代文字で記され偽史と認識されている。

 同文書は、武烈天皇の命により平群真鳥が神代文字で記されていた古伝承を再編したものと言われており、平群真鳥の末裔である竹内家に養子に入った竹内巨麿が、1928年(昭和3年)3月29日に文書を公開したのが最初である。この内容は当時日本中で物議を呼び、1930年と1935年の二回に渡り、天津教弾圧事件を引き起こす結果となった。その論争は最高裁判所まで至り、無罪が確定したものの、一部の文献は返却されず、大部分の文献は東京大空襲により焼失してしまった。

 幸い竹内巨麿が残していた写しやメモがあり、証拠押収の際に撮影された写真も残されていたことから、その内容はおおむね復元された。皇祖皇太神宮の神宝「モーゼの十戒石」を含む数千点に及ぶ資料は膨大で、戦後のオカルト界に大きな影響を与えた。

 同文書によると、天皇家は『天神7代』から始まり、『上古25代』『不合朝(あえずちょう)72代』と続き、現在の天皇家は『神倭朝(かむやまと ちょう)』であるという。また、キリストやモーゼなど世界の指導者は一度は来日しており、天皇に仕えたとも記述されている。このあたりは日本中心主義の影響が見て取れる。

 また、世界には五色人という人種がおり、黄人、赤人、青人、黒人、白人に分類されるという。さらに、アトランティス伝説に出てくるオリファルコンと関連あるのではないかと言われている謎の金属・ヒヒイロカネについても記述されているのだ。

 特筆すべきは、ミヨイ・タミアラという未知の大陸が描かれた世界地図が含まれている点だ。この大陸こそが、伝説のアトランティス大陸やムー大陸だったのではないかという指摘もなされている。

 さらに、聖書に記されている「モーセの十戒」は「表十戒」に過ぎず、「裏十戒」「真十戒」などが天津教に保管されていたというのだから凄い。

 また、これは古代のUFOではないかと思われる物体が「天の浮舟」である。なんと、古代の天皇は「天の浮舟」を駆使して、世界中を飛行し統治したとされているのだ。高速で空を飛ぶ飛行物体が日本にあったとは俄かに信じがたいが、ロマンあふれる内容であることは言うまでもない。

 筆者はこれらの偽書とされる文書が全く価値がないとは思わない。その成立背景にある社会背景や人間の心情など考えると、これもまた日本人の精神活動の記録だと思えてくる。『竹内文書』が退屈な現代人の心を救ってくれているのは事実であろう。

(山口敏太郎)

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