しかし、こんな生活をしていてはダメ。暑いからといってクーラーをがんがんつけ、冷たい飲食物を摂り続けていると“冷え性”に陥る。体の免疫力が落ちてしまい、風邪はもちろん、動脈硬化や脳卒中など、かなり危ない病気を呼び込む可能性が大きいのだ。
一般的に“冷え性”といえば、女性特有の症状と思われているが、実は、男性にも“冷え”による体調不良を訴える人は増えている。
猛暑で大量の汗をかき、水分補給も怠りなくしているのに、「疲れが取れない。体がだるくて食欲もない。夜も眠れない」といった“夏バテ”特有の症状を訴え、仕事の能率低下、出勤するのも辛いなどという人が多い。
ところが、こうした“夏バテ”の裏に、真逆とも言える体の“冷え”が大きく関わっているとなると、暑さ対策、熱中症予防だけでは済まされない。
自動車保険の外交員Bさん(48)は、仕事柄から外回りが多い。猛暑の中でも顧客を訪ね歩くなど、汗だくの日が続く。当然、水分補給や涼しいところで休憩を取るなど、暑さ対策には人一倍気を使っていた。
しかし、毎年のことだが、8月の中旬〜下旬を過ぎると“夏バテ”現象に陥り、食欲も細く、気分が滅入るような状況になる。そこでBさんは、思い切って自宅に近い掛かり付けの医院に行った。
問診を繰り返すうち、
「あなたは暑がりでしょう。昼間の暑さ対策はしているようですが、夜寝ている間に問題があるようです。クーラーをつけっ放しとか、裸状態で眠っていては、体は冷えてしまい、おかしくなります」と医師に言われた。
加えてBさん、家で晩酌もする大のビール好き。それに昔から、パジャマを着るのが苦手なタイプ。上半身裸か、ランニングシャツ姿の超薄着で寝てしまう習慣があるという。
結局、Bさんは医師から処方された漢方薬などを飲み続けた結果、症状は改善し、2週間ほどで体調は戻った−−−。
Bさんは反省を込めながら「夏は熱中症対策も大事ですが、冷えも怖い。これからは、生活習慣も改め直し、冷房の使い方にも十分注意が必要ということがわかりました」と語る。
“冷え性”は、体にさまざまな弊害を起こす。専門家によれば、体が冷えると血管が収縮し、血液の流れが滞る。本来血液は、全身の細胞に酸素や栄養素を運び、二酸化炭素や老廃物を回収する役割を担っている。
ところが、その役割が体の冷えなどによって低下。すると、細胞が合成や分解を正常に行うことができない。細胞の活動が鈍くなり、老廃物が溜まってしまい、血流がますます滞る。さらには体の隅々に栄養も届かず、冷えが一段と進むという。
東京社会医学研究センターの村上剛主任は言う。
「昔から言われていることですが、本来、人の体は冷房や暖房のない暮らしに適合しているんです。夏に真冬のような環境に置かれると、自律神経のバランスが崩れ毛細血管の調整が効かなくなり、血液が体の隅々までいかずに“冷え”を感じる。しかも、1日中、冷房の効いた部屋で仕事をしていると、体の深部まで冷え、飲み物も冷たい物を多く摂れば体の内側に冷えが滞ってしまう。すると、男性は頻尿や腰痛を悪化させ、風邪はもちろん、免疫力の低下によって、ウイルスや病原菌への自己防衛の機能が落ちます。言わば病気になり易く、また治りにくくなってしまうのです」