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イギリスの海岸に漂着する樹脂塊の謎(1)

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画像はイメージです。

 数年ほど前から、ゴムを固めたようなタブレット状のブロックが、イギリスの海岸に漂着し始めている。それはまな板のように平たい長方形の塊で、中央部には「Tjipetir」と読めるアルファベットの刻印があった。謎の塊がいつから漂着し始めたのかは不明だが、イギリスのトレイシー・ウィリアムスさんが2012年に謎の塊についてインターネットで呼びかけた際には、少なくとも21世紀の初め頃には漂着していたとの情報が寄せられた。さらにイギリス各地はもちろん、フランスやオランダ、デンマーク、遠くはスペインやノルウェーにも「同じ寸法、形状、刻印」の物体が漂着しているなど、謎の塊は北西ヨーロッパ諸国の広範囲に散らばっていることも明らかとなったのである。

 そして、謎の塊はグッタペルカと呼ばれる樹脂であること、また中央部の「Tjipetir」という刻印については、インドネシアのティペティールという地名であることも判明したのである。

 グッタペルカとはゴム状の樹脂で、アカテツ科の樹木から採取、加工される。また、グッタペルカはマレー語で「ゴムの木」を意味するガタパーチャを、オランダ語風に発音したようだ。グッタペルカはゴムに近い樹脂だが、高い絶縁性と「水中ではほとんど変質しない」という特性から海底電線の皮膜として多く用いられたほか、カメラの外装にも使われたことが知られている。現在では、特性を活かして歯科治療やゴルフボールの外皮として用いられるが、かつて程の需要はないようだ。

 そして、インドネシアのティペティールは、かつてオランダの植民地だった時代にグッタペルカの積み出し拠点として栄え、輸出される樹脂はイギリスが独占していたとされるのだ。しかし、ティペティールがグッタペルカの積み出し拠点だったのは1920年代の終りまでで、遅くとも太平洋戦争が始まる頃には廃れてしまい、現在では寂れた寒村にすぎないという。

 北西ヨーロッパの各地に漂着したグッタペルカの塊は、いつ、どこから流出したのだろうか?

(続く)

写真 http://www.bbc.com/news/magazine-30043875

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