そして、謎の塊はグッタペルカと呼ばれる樹脂であること、また中央部の「Tjipetir」という刻印については、インドネシアのティペティールという地名であることも判明したのである。
グッタペルカとはゴム状の樹脂で、アカテツ科の樹木から採取、加工される。また、グッタペルカはマレー語で「ゴムの木」を意味するガタパーチャを、オランダ語風に発音したようだ。グッタペルカはゴムに近い樹脂だが、高い絶縁性と「水中ではほとんど変質しない」という特性から海底電線の皮膜として多く用いられたほか、カメラの外装にも使われたことが知られている。現在では、特性を活かして歯科治療やゴルフボールの外皮として用いられるが、かつて程の需要はないようだ。
そして、インドネシアのティペティールは、かつてオランダの植民地だった時代にグッタペルカの積み出し拠点として栄え、輸出される樹脂はイギリスが独占していたとされるのだ。しかし、ティペティールがグッタペルカの積み出し拠点だったのは1920年代の終りまでで、遅くとも太平洋戦争が始まる頃には廃れてしまい、現在では寂れた寒村にすぎないという。
北西ヨーロッパの各地に漂着したグッタペルカの塊は、いつ、どこから流出したのだろうか?
(続く)
写真 http://www.bbc.com/news/magazine-30043875