「彼女の実父でトレーナー的存在でもある田村勝美氏は、春ごろから『今年6月の本格的復帰』を周囲に伝えていました。全日本柔連(全国柔道連盟)も、勝美氏と同じスケジュールを口にしていました」(JOC関係者)
言い換えれば、今回の出馬表明は急展開で決まったわけである。
「谷は3月末に辞表をトヨタに提出し、決心したと語っていましたが、選挙に出れば、柔道に専念できなくなる。ギリギリまで迷ったのが真相でしょう」(前出・同)
一部報道によれば、谷が所属するトヨタのリコール問題も“影響”しているという。米議会・公聴会に豊田章男社長も出廷しなければならなかった経営的ダメージを指し、「与党・民主党が支援を約束し、その見返しとして彼女を差し出した」とあった。その真偽はともかく、柔道関係者が今回の出馬を好意的に捉えている理由は、1つ。「次の五輪出場を逃したとしても、参議院議員になっていれば過去の栄光にも傷は付かない」と考えたからだ。
「谷の出場する『48キロ級』は激戦区ですよ。世界ランキングでベスト5のうち、3人が日本人選手なんです。昨年9月の世界選手権で優勝した福見友子、成長著しい22歳の浅見八瑠奈らがライバルになるでしょう。今年の世界選手権出場から、『各階級2人』までに出場枠となり、すでにライバルたちは合同合宿にも招集されています。実績のある谷は6月から始動するつもりでいましたが、その遅れを『キャリア』だけで取り戻せるのかどうか…」(前出・同)
北京五輪後のルール変更により、五輪出場を果たすには『世界ランキング』の14位以内に入っておかなければならない。しかし、谷は昨秋の第2子出産もあって、世界大会には出場していない。従って、国際柔道連盟(IFJ)が公表しているランキング表には、「RYOKO TANI」の名前すら掲載されていない。母親となって挑戦した北京五輪で金メダルに届かなかったのは年齢的な理由もあったはずだ。このうえ、参議院議員の肩書も加わるとなれば、五輪出場枠を勝ち取れない可能性の方が高くなるだけだ。
先のJOC関係者がこう続ける。
「全柔連の指導者たちは2000年のシドニー大会が限界だと思っていました。04年のアテネでも金メダルが取れたのは本人の努力としか言いようがない。でも、同時に彼女は引き際を失ってしまったんです」
谷は議員生活の多忙さを理由に、ロンドン大会を辞退するのかもしれない。たとえ出場できたとしても、年齢的理由、調整不足などで満足な結果を残せないだろう。そのとき、『議員生活』という“大義名分”があれば、過去の栄光にも傷は付かない。著名人を担ぎだそうとする政界の都合はともかく、全柔連も選挙協力は惜しまないそうだ。