桜花賞を勝つ難しさを一番知る人、そして一番勝ちたい人かもしれない。昨年、後にダービー馬となったウオッカで2着惜敗した角居師は、こうつぶやいた。
「この時期の牝馬はフケやら熱発などがあって、体調面の管理が難しい。いろんな要素がドンピシャ行くかどうかだね。しかし今年はどの馬にもチャンスがあるから」
ドンピシャにさえなれば…勝てるだけの能力がある。それは2歳女王トールポピーへの思いだけではない。もう1頭、ポルトフィーノにはさらに強く思いを募らせているかもしれない。
昨年6月の新馬戦を圧勝、8カ月ぶりで迎えたエルフィンSも次元の違いとしかいいようのない強さで2連勝を飾った。牡馬の強敵もそろっていた前走のアーリントンCも当たり前のように圧倒的1番人気。だが、大きな落とし穴にはまった。
先を見据えて、それまでの逃げから一転、控える競馬を試したところ、道中でまったく折り合いがつかず8着に自滅したのだ。
「試しにああいう競馬をしてみたけど、馬込みで馬が怒っていた」と師は振り返った。父はクロフネ、母は名牝エアグルーヴ、姉にはアドマイヤグルーヴがいる誇り高き超名血だ。そのプライドがたとえ道中でも前に馬がいる状況を許さなかったのかもしれない。
あの敗戦で陣営の腹は決まったようだ。今度は小細工しない。「乗り方はジョッキーに一任する」としながらも、この中間は他の馬と絡まないようにして、テンションを上げないよう調整されてきた。差す競馬を覚えさせるなら、前に馬を置くなど調教から工夫するはず。スローになりがちな阪神のマイル戦。思い切った逃げで活路を見出す考えのようだ。
武豊が鞍上なら同じ失敗は2度しないだろう。大混戦の今年、潜在スピードはダントツの存在だ。それを生かし切れば「桜冠」に手が届く。
【最終追いVTR】武豊騎手を背に、CWコースを単走でサッと流した程度。それでも、5F65秒1の時計が出た。動き自体は目立たなかったものの、気合乗り、馬体の張りともに文句なしで仕上がりは抜群だ。