昨季は苦しいシーズンとなってしまった。苦しみながらも、58試合に登板してチームを支えたが、前半戦はストレートを痛打される場面も目立った。不調の原因は下半身の故障だった。8月、ハムストリング痛でDL入り(故障者リスト)した。しかし、復帰後は16試合に登板し(14イニング)、自責点「2」、防御率1・29。『復活』を感じさせるこの好投がなければ、レッドソックスは再契約に二の足を踏んでいたかもしれない…。
というのは、岡島は年々、成績を落としているのだ。ワールドシリーズ制覇の『影の立役者』とも賞された1年目は66試合登板、防御率2.22、WHIP「0.97」(1イニングあたりに許した走者の数/安打プラス四球)。2年目は64試合登板、防御率2.61、WHIP「1.16」。3年目は68試合登板、防御率3.39、WHIP「1.26」。4年目の昨季は56試合登板、防御率4.50、WHIP「1.72」。1年目と2年目は“誤差の範疇”だが、3年目は大きく落とした。防御率だけを見ればひどい数値だが、メジャー球団は防御率よりもWHIPを重視する傾向もある。とくにリリーバーに対する評価がそうで、岡島の場合は防御率が3点台に落ち込んでも、<WHIP 1.26>とア・リーグでも上位の数値を保ったことで、首脳陣の評価は落ちなかった。
その3年目(2009年)、岡島は走者を背負った場面でも投入されたが、彼が引き継いだ計37人の走者のうち、本塁帰還を許したのは「たった6人」。生還阻止率84%という見事な火消しぶりもみせている。要するに、3年目は走者を背負わないイニングで、先頭バッターにガツンとやられていたわけだ。4年目の不振は「ハムストリングの故障で本領を発揮できなかった」と、判断してもらえたようである。
大雑把な言い方になるが、岡島がメジャーでブレークできた要因は2つ。日本時代は「ボール」と判定されることも多かったが、『軌道の大きいカーブ』を持っていること。もう1つは、『ノンルッキング・デリバリー』である。その「捕手を見ない幻惑投法」が、対戦打者のタイミングをくるわせたのである。
しかし、『ノンルッキング・デリバリー』は通用しなくなってきた。4年も経てば、対戦打者も見慣れてくるからだろう。奪三振数が「63」、「60」、「53」、「33」と減少の一途を辿っている。そうなると、大きなカーブを生かしていく配球を考え直さなければいけないが、「ストレートのキレを取り戻すこと」というのが、首脳陣の意見だ。
岡島は左投手でありながら、『ヒッターズ・パーク』とも言われるレッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークで、ハイレベルなWHIPを残してきた。その点はもっと評価されるべきだろう。
フェンウェイ・パークのレフトの11.3メートルの巨大フェンス・モンスターグリーンでも知られるが、ライトと右中間のフェンスがえぐり取られたように深くなっているのに対し、レフトはたった95メートル。モンスターグリーンがあっても、その上を越える本塁打、直撃弾の長打が量産される球場でもある。つまり、『右バッター有利の球場』であって、「左投手は好成績を残せない」とも言われてきた。しかし、左腕・岡島はたとえ右の代打を投入されても、過去4年間、高いWHIPの数値を残してきた。それが、カート・ヤング投手コーチに「まだ必要なリリーバー」と判断させた理由でもある。
「新たな左のリリーバーを探すのは、たいへんですよ。左の好リリーバーがFA市場に出たとしても、レッドソックスとの契約を嫌う傾向もあるので」(米メディア陣の1人)
下半身の故障を「年齢的なもの」と捉える声も聞かれた。テリー・フランコーナ監督も若干だが、岡島の復調に不安げな見方をしているという。その証拠が、再契約時の提示年俸に表れている。275万ドルだった年俸は175万ドルまでダウンさせた。
昨季は故障のため前半戦で躓き、一昨年は後半戦以降、夏バテ…。一年間、コンスタントな成績を残してほしい。そうすれば、減額された分もオフの契約更改で一気に取り返せるだろう。(スポーツライター・飯山満)
外国人選手名の方仮名表記はベースボール・マガジン社刊『月刊メジャー・リーグ』を参考にいたしました。