観客席はわずか3500席と、超プレミアチケットに国内外から応募が殺到し、高倍率となった最後のライブ。惜しくもチケットが手に入らなかったファンが沖縄に集結し、街は一時パニック状態となった。
ライブの全貌は事前に明かされていなかったため、異例のフェス形式に続々登場するアーティストがライブに華を添え、ファンを一層沸かせた。そして、ライブで最も観客が沸いた場面というと、俳優で歌手の山下智久が登場したときのことだった。
安室と山下は2011年に「安室奈美恵feat.山下智久」名義で「UNUSUAL」を発表。その縁があって、今回サプライズゲストとして出演を果たしたのだ。人気アイドルの参戦に観客のボルテージは最高潮に。ファンのみならず誰もが驚き、想像していなかった人物でもあろう。
だが、会場が驚いたのは単にそれだけではない理由があった。実は、楽曲のPV撮影を巡って騒動が起き、不仲説が浮上したのだ。安室のストイックに打ち込む、ダンステクニックは一流である。山下が安室のテンポに付いていけないのも無理はない。よって収録でNGを連発してしまう事態に。始めは安室も苦笑するにとどまっていたというが、何度やっても息が合わずじまいで撮影は苦戦していた様子だったという。
ところが、山下は「じゃあ、オレ、安室さんに合わせますよ」と半笑いを浮かべ余裕の勘違い発言をしたというのだ。まるで、ズレを生じているのは安室と言わんばかりの発言に対し、ついに安室がプッツン。それ以降、両者は言葉を口にすることはなく、ただ淡々とダンスをこなし、凍り付いた現場には異様な空気が漂っていたそうだ。
そして2人は、楽曲と安室自身のアルバムのPRを兼ねて、歌番組への出演が何本か決まっていたというが、東日本大震災の直後とあって、震災を理由に出演を全てキャンセルしたという。しかし、PV撮影時の件が尾を引き、今後二度と安室と山下が共演することはないであろうと当時はささやかれていたのだ。また、安室が周囲に「ああいうタイプは苦手」と漏らし、山下を毛嫌いしていると報じられた。
あれから7年の時が経ち、ステージ初共演の2人の息はピッタリだったように見えた。そして、歌い終えた安室は笑顔でガッツポーズをして、山下に満面の笑みで手を差し出し「ありがとうございました」と握手を交わしたのだ。観客を魅了した両者は、まさに“感無量”の面持ちであった。さらに、安室はライブに参加したアーティストを紹介する際に、山下を「やまP―!」とコールしたといい、これまで囁かれていた不仲説はこれにて一蹴した。
かつては、社会現象まで巻き起こし、音楽界の歴史に名を刻んだ歌姫は“平成”の時代とともに去っていった。だが、彼女の歌は時代や世代を超えて、これからも永遠に愛され続けて行くだろう。