現在推定年齢30才前後の彼らは、どっかの女性アーティストが引き連れている冴えない男たちと違って、ボーカルの激ヤセ眼鏡・後藤正文以下、みんなけっこうイケテるお兄さん達。だのになぜかCDジャケットはいつも少女趣味なイラストがあしらわれている。しかし中村佑介という人が描いているこの細やかなデザインが、曲の世界観と合っている。一見、荒削りなアジカンのサウンドは、実はよく聴いてみるとこの絵の様に繊細。実はバンド少年ばっかりじゃ無く、オシャレな草食系男子や女の子からの支持も厚いのだ。「アジカンの曲は、まさにエッジ(スケート靴の滑り金具の氷面に接する“ヘリ”の部分)の効いた音楽!」彼らのデビュー当時の曲を聴いて、記者はこんな感じがした。
エッジでガリガリ氷をかいて、粗い氷の粒を弾かせ、いろんな光り方をする音色だ。
しかし、デビュー当時こそ荒い氷の粒だった彼らの曲が、だんだん最初から雪だったみたいに大人しい曲調に変わっていった。年齢と共に落ち着いて激しさが無くなり、今や記者の様な中年女に満点を出されてしまうASIAN KUNG-FU GENERATION。よくよく考えるとロックとしてそれはヤバイのではないか。アジカンの曲を売るターゲットが、少子化が進む若い世代を見捨て、アラサーOLなどにシフトし、確実に年齢層を上げているのだ。
08年に出たアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』のモチーフは何と江ノ電。サザンオールスターズの「稲村ジェーン」をもじった「稲村ヶ崎ジェーン」とかもあって、もう視点は中高年である。まさか後藤氏は「くるり」の人みたいに“鉄っちゃん”だったのか? とさえ疑いたくなる。
記者が年取ったから言うわけでは無いが、ロックはやっぱり思春期を意識した「若者」のものであってほしい。【これじゃ売れない!】とか言って、売れる方向にシフトするバンドにケチをつけるのも何だが、アジカンの様なサウンドは「年寄り」や「おばさん」に媚びたら終わり。そちらの層へのアピールは、ジャケットのイラストで匂わす程度で十分ではないか。売れてもハングリーさを残してほしいと思うのは贅沢な要求か。
ジジババが大好きな「篤姫様」に飼い殺されたアジカンだけは、見たくないのである。
(コアラみどり)
写真 (江ノ電モチーフの『サーフ ブンガク カマクラ』。この落ち着き様に、永遠中二病の記者はショック!)