遠藤と中村憲剛(川崎)が中盤でタメを作り、内田篤人(鹿島)と長友佑都(FC東京)の両サイドが攻め上がる。そして岡崎と香川真司(C大阪)が守備陣の背後のスペースに飛び込む…。岡田監督が思い描いてきたサッカーで日本は主導権を握った。
開始15分の岡崎の先制点に始まり、32分には再び岡崎、44分には香川がゴール。前半のうちから3点をリードした。後半にも中澤佑二(横浜)と安田理大(G大阪)が追加点を挙げ、終わってみれば大勝。悪い流れを止めた岡田武史監督は少なからず安堵(ど)したことだろう。
だが残念なことに、フィンランドは「仮想・豪州」にならなかった。「プレスがなくてフリー状態。このチームなら自由にやれて当然だった。豪州は比べ物にならないほど強い」と遠藤も諦め顔で話したほどだ。
そんな相手に3試合連続でセットプレーから失点を許した。後半5分、5年ぶりの代表戦出場となったGK都築龍太(浦和)がCKに反応も、パンチングが中途半端。FWタルバヤルビと競った闘莉王は完全にマークを外し、こぼれ球を拾う選手もいなかった。ミスが重なり、次の瞬間にはMFポロカラに右足でシュートを叩き込まれていた。
平均身長で日本を7〜8センチ上回る豪州はハイボールに滅法強い。同じようなミスは命取りだ。だが、川口能活(磐田)と楢崎正剛(名古屋)の2枚看板をケガで欠く日本は誰が守護神を務めるかも決まっていない。守備陣との連係も不十分なだけに、次の試合ではそのスキを狙われる可能性が非常に高い。
守りだけでなく、攻撃面も不安が残った。フィンランドは時差ボケのせいか動きが鈍く、日本は好き放題にやることができた。
しかし主力のほとんどが欧州で活躍する豪州が同じようなミスをしてくれるわけがない。もっと激しいマークで岡田ジャパンを困惑させるだろう。中村俊輔(セルティック)が加わったところで中盤を制圧できるとも限らない。
サイドからのクロスも単調な形が続いた。ただ高いだけのフィンランドなら崩せても、最終予選無失点と鉄壁の守りを誇る豪州は簡単には崩せないだろう。
「GKのシュウォーツァー(フラム)は素晴らしい。そう簡単に点は入らない」と指揮官も絶賛するほど。普通に蹴り込んでも跳ね返されるのがオチだ。今回の前哨戦では、堅守をこじ開けるだけの効果的なサイド攻撃が見られずじまい。ゴール前への泥臭い飛び出しもなかった。大久保嘉人(ヴォルフスブルク)ら欧州組が戻るのも直前だけに心配だ。
豪州に敗れれば「南アW杯4強」の目標が困難なことを日本中のファンに露呈してしまう。夢を失ったチームは先に進めなくなるだろう。この1週間でどこまで修正できるのか。まさに今が岡田監督の正念場だ。