「矢島美容室」はこれまで、2008年10月発売した『ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ』から、2009年は『SAKURA -ハルヲウタワネバダ』、『はまぐりボンバー』3作を発売。しかし、かつて「とんねるずのみなさんのおかげでした」のスタッフを集めて生まれた音楽ユニット「野猿」ほどの勢いは無い。『はまぐりボンバー』から4か月あまり表立った活動をしていなかったが、そこへ出た映画の話。どうやら野球が絡んだストーリーになるようが、とんねるずが得意なスポーツを駆使しての笑いもいささか古い。映画はヒットするだろうか。
かつて若者や子供たちに熱狂的な支持を集めたとんねるずは今、苦境に立たされている。
20年来彼らをテレビで見てきた初期のとんねるずファンも、すでに親世代。バブルを経験した彼らと違い、その子供たちには「強気な下克上」がテーマだったとんねるずの笑いは受け継がれなかった。かつて仮面ノリダーやガラガラヘビなど毒気の強い笑いで人気を集めたとんねるずは、「矢島美容室」でもおいしい2匹目のドジョウ(子供ウケ)を狙っているが、そこで迎えた若者に人気のアーティストのDJ OZMAも、不良っぽいイメージがして子供にウケない。今なら「さかな君」や「イモトアヤコ」と組んだ方が、絶対に子供たちに受け入れられただろう。
それでも、とんねるずは頑として、「矢島美容室」のターゲットを小学生に絞り、番組では三人が小学校を訪問したりしている。しかし、当の子供たちはアメリカ人女性を意識した“派手すぎる”「矢島美容室」のスタイルに引き気味。「はんにゃ」や「オードリー」など地味で穏やかな笑いに慣れた“ゆとり世代”には刺激が強すぎるように見えた。
そして心配なのが、自ら作った“失敗ユニット”「矢島美容室」にダラダラ付き合わされているDJ OZMA。彼は、お笑いバラエティ番組に多く露出するタイプのタレントとは路線がまるで違うし、2006年の「NHK紅白歌合戦」でミソは付けたが、DJ OZMAのパフォーマンスの表現力は高く、洋楽を意識した(というかパクッた)彼の曲は、とんねるずとコラボしないでも十分に売れる可能性が高い。「矢島美容室」を続ければ続けるほど、DJ OZMAの価値は下がる。彼はこのまま「矢島美容室」を続ける事に危機感を感じないのか。
2009年は、氣志團の再活動や、自ら見つけてきた4人組女性ロックバンド 「キノコホテル」のデビューなど、控えめに話題を振りまいたDJ OZMA。麻薬やセックスを連想させるホストスタイルを卒業し、硬派に戻った事をもっとアピールすると、「体育会系」のとんねるずとのバランスがとれてくるのではないか。ヤンキー応援団と野球は相性がいい。
見た目以上に実際はクリーンなのだから。(コアラみどり)
写真 (怪しいキノコがモチーフだった、ホストスタイルのDJ OZMA。2006年大ヒット。)