ともあれ、そのような疑問がきっかけとなってユーザによる調査が行われ、太平洋戦争前から似たような表現は存在していたものの、アメリカやイギリスではそのような呼称が存在した証拠を見つけられず、情況証拠などから使われなかった可能性が高いことなどが明らかとなったのである。
まず、太平洋戦争前に出版された国防科学研究会編「平易に説いた陸海軍の知識」には「世界の七大戦艦」なる表現が存在しており、これが「世界のビッグ7」へ変化したであろうことはほぼ間違いないとされた。問題は変化したきっかけや時期だが、それらについてはアメリカにおける戦艦の呼称にヒントが隠されていた。
第二次世界大戦前のアメリカ海軍は戦艦18隻を保有しており、いわゆる「世界のビッグ7」に含まれるコロラドとメリーランド、ウエスト・ヴァージニアはそれぞれ強力な戦艦として国民に親しまれていた。また、それらの前に建造されたテネシーやカリフォルニアとあわせて「ビッグ・ファイブ」と呼ばれ、当時のアメリカ海軍を代表する存在となっていた。
そう「ビッグ・ファイブ」である。残念ながら「ビッグ7」ではない。
アメリカ海軍としては、別に他国の海軍と比べてどうこう言うつもりなどなく、自国の戦艦のみで「ビッグ・ファイブ」を誇ったのだ。アメリカ海軍の「ビッグ・ファイブ」は当時の新聞やニュース映画などでも使われており、広く親しまれた呼称であったことは疑いない。
このような背景から、わざわざ「ビッグ・ファイブ」から削ったうえ、日本やイギリスの戦艦を加えて「ビッグ7」などと称する可能性はほぼ皆無で、また外国の戦艦を含めるなら「ビッグ・ファイブ+4」か、あるいはビッグ・ナインであろう。とはいえ、そのような表記も現状では発見されておらず、単にアメリカではそのように呼ばれていなかったとみるのが自然である。そして、太平洋戦争後に「世界の七大戦艦」と「ビッグ・ファイブ」がまざって、問題の「世界のビッグ7」へ変化したのではなかろうか?
それでは、イギリスでも「ビッグ7」と呼んだ可能性はなかったのか?
(続く)