「とはいえ、こうしたウーバー社の動きに危機感を強めたのが、アメリカで同社の最大のライバルであるリフト社。実はこのリフト社に今年3月、日本円で約370億円を投資して10%を超える株主に躍り出たのが、楽天の三木谷氏なのです」(同)
三木谷氏といえば、経団連に対抗すべく新興IT関連上場企業約80社が参加する『新経済連盟』を'10年に結成、その代表理事として国への発言力を強めている。
「その新経済連が国への要望として強く推し進めているのが、将来15兆円規模と見る『シェアリングエコノミー』。つまり、東京五輪を見込んでの民泊・ホームシェアと、白タク・ライドシェアです。さらに三木谷氏は、今年4月に新経済連が開いた新経済サミットに、なんと自分の投資先であるリフト社のジョン・ジマー社長を招待し、ライドシェアを日本へ進出させることを猛烈にアピールした。しかし、これには新経済連の一部会員から、公的機関を利用した傲慢な商法だと、批判の声も噴出したほどです」(同)
三木谷氏の傲慢さは、新経済連に関してだけではない。
「彼は、首相を議長とする産業競争力会議の民間議員で、政府の内側から国の方針に大きな影響力を持っている。この会議には、小泉純一郎首相時代に閣僚として大きな政策決定に辣腕を振るった、竹中平蔵慶応大教授も名を連ねている。竹中氏は現在、安倍首相のブレーンでもあり、派遣社員を増加させるだけと悪評高い改正派遣法を成立させている。さらに国家戦略特別区域諮問会議の議員でもあり、当然、三木谷氏も竹中氏もライドシェアでは一枚岩です」(同)
つまり、三木谷氏は自分の投資した事業を躍進させるため新経済連を利用し、一方では竹中氏らと「白タク」事業推進のために国の諮問機関で安倍首相を籠絡させたとも言えるのだ。
新経済連会員は、こんな話もする。
「もう一人、三木谷、竹中、両氏の裏で暗躍しているのが、ソフトバンクの孫正義社長ともっぱらです。実は三木谷氏が出資したリフト社には、昨年ニューヨーク市場に上場した中国の電子商取引企業・アリババが、昨年250億円出資しているからです」
そのアリババの筆頭株主が、34%の株を持つソフトバンクだというから驚きだ。ソフトバンクは、このタクシー配車サービス、「白タク」事業の将来の可能性を見越し、インドや東南アジア、さらにはアリババと共同で、中国で新たなライドシェア企業に数百億ずつ投資しているという。
「日本でも、孫氏は三木谷氏の後ろ盾とも囁かれています。孫氏は日本で白タク事業が始まれば、リフト社を使い一気に事業攻勢をかけるとも見られているのです」(新経済連関係者)
しかし、全国紙元特派員は、「白タク」事業をこう懸念する。
「今のところ、日本でウーバー社が依頼したタクシー会社の事故はないが、インドでは派遣された一般ドライバーが客をレイプする事件も起きている。よほど運転登録資格や条件をしっかりしないと、誘拐、強盗、レイプなどの大事件にもつながりかねない事業です」
ハイヤー・タクシー、いわゆるハイタク運転手で結成する労働組合、全自交労連幹部もこう指摘する。
「ライドシェアは、成長産業という美名のもと、日本の国民の安全・安心の足、公共交通の根幹を破壊しかねません。一度破壊されたら、バスも含め国民の足は完全に折れてしまう。断固反対です」
来年の国会には俎上に上がる可能性もある「白タク」事業。事の成り行き次第では、来年の参院選での票の動きを大きく左右するかもしれない。