与党の勝因は明らかだ。投票率が48・8%と戦後2番目の低さを記録したからだ。無党派層が投票に行かなければ、組織的に動員することができる政党が有利になる。現に公明党は、3議席増やしている。
今回の選挙ほど争点が明確な選挙はなかった。年金問題では、与党が70歳までの継続就業で年金支給開始を実質的に70歳に移すとしたのに対して、野党は最低保障年金やマクロ経済スライドの廃止などで、税金の投入による年金底上げを主張した。消費税に関しては、与党が10月からの引き上げを主張したのに対して、野党は税率を8%に据え置くとしたのだ
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しかし、国民の関心は高まらなかった。メディアで政策論争が行われることは少なく、国民の関心は、むしろ吉本興業のゴタゴタのほうにあったのだ。
なぜ国民の関心が高まらなかったのか。私は野党の政策が中途半端だったからだと思う。例えば、消費税率を凍結しても、何も改善しない。国民生活を改善しようと思えば、引き下げないといけない。だから私は野党議員に会うたびに引き下げを提案したが、彼らはかたくなだった。野党が保守化してしまったのだ。
ところが、れいわ新選組だけは、思い切った政策を並べた。消費税廃止、奨学金チャラ、最低賃金を税投入で1500円にするなどだ。これに必要な財源は、総額29兆円に達するが、それは法人税に累進制を導入するなど、大企業・富裕層への課税強化で賄うという。
さらにれいわ新選組は、物価上昇率が2%に達するまでは、1人月額3万円を給付するとして、その財源を国債発行に求めた。この政策に必要な財源は45兆円という巨額になるが、私は可能だと思う。安倍政権の6年間で、日銀が国債保有を増やしたのは、1年平均で57兆円に及ぶから、安倍政権時代よりもペースを落とした金融緩和で、十分財源を賄える。れいわ新選組は、MMT理論に基づいたベーシックインカムの導入を、日本の政党として、初めて明言したのだ。
れいわ新選組の人気は圧倒的だった。4月に発足したばかりの政治団体が、4億円もの寄付金を集め、街頭演説では、既存政党を凌駕する聴衆を集めた。現実には、比例で2議席を獲得したにすぎなかったが、それはテレビがこの“れいわ新選組フィーバー”を、ほとんど報道しなかったからだ。
しかし、今回の選挙で政党要件を余裕でクリアしたれいわ新選組は、メディアに登場する機会が増えるので、次の衆議院選挙で台風の目になる可能性が高い。また、他党所属の国会議員のなかにも、れいわ新選組の政策に共感する議員がそれなりに存在するから、議席が増えていく可能性もある。さらに今回落選した山本太郎代表は、次期衆議院選出馬を明言している。
今後の日本の政治は、与野党対決ではなく、与党、野党、そしてれいわ新選組の三極体制に移っていくのではないか。
消費税増税が行われる10月以降は、確実に景気が悪化していく。そのなかで国民は景気回復を強く求めることになるだろう。国民の声の受け皿ができたことが、今回の選挙の最大の収穫と言えるのではないか。