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ミステリー 2015年09月23日 16時44分
亡霊軍人の帰還(3)
最近はやや少なくなってきたようだが、かつては外地で戦死した将兵が亡霊となって帰郷を果たす怪奇譚が、終戦記念日やお盆の定番として毎年のように語られ、テレビなどでもドラマ仕立てで取り上げられることがあった。お盆の時期に語られる怪奇譚が定番化したのは文化文政期から幕末以降とされるが、当時は武士階級を怪談のネタにすることそのものがはばかられたためか、あるいはたんに不人気だったためか、亡霊武者が故郷に帰るといった趣向の話はあまり伝わっていない。 亡霊軍人が帰郷する怪談話が増えるのは、第一次世界大戦後のシベリア出兵で大きな損害を出してから、昭和初期に怪奇幻想小説が流行し始めたことがきっかけとされている。だが、怪奇小説の流行は新聞などから批判された上、警察の取り締まりもあったことから急速にしぼみ、復活したのは太平洋戦争の敗戦後であった。このような事情から、戦前や戦中における軍人の怪奇譚は同時代にあまり語られず、その多くは戦後に「過去を振り返る」形で語られている。しかし、戦中から語られていた亡霊軍人の帰還譚がなかったわけではなく、中でも旭川歩兵第二十八連隊の怪奇譚は現在も地元の語り草となっている。 旭川の歩兵第二十八連隊から派出された一木支隊が、最悪の戦場とも呼ばれるガダルカナルの戦いで壊滅した1942年の夏。駐屯地付近の官舎では窓が燃えるように赤く染まるなどの怪異が目撃され、やがて「深夜、兵隊が行進して駐屯地に入っていったが、歩哨の誰何にも答えず、追いかけたら誰もいなかった」との噂が将校の留守家族にまで伝わり、人々を不安がらせたという。 やがて戦死公報が続々と届き、深夜の兵隊は戦死した将兵の幽霊だったことがわかるとともに、残された家族は深い悲しみに包まれたという。(了)
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レジャー 2015年09月23日 16時41分
キャバ嬢が生まれる瞬間(63)〜年上の男性が好きだった女〜
神楽坂明子(仮名・23歳) 幼い頃に両親が離婚してから、私は母親に女手一つで育てられてきた。幼稚園の時に父親と離れて以降、一度も会っていないし、顔も覚えていない。でも特に子供の頃は寂しいだなんて思ったことがなかった。逆に母は夜遅くまで働いていて門限などもなく、どちらかといえば気楽だった。だけど10代後半になると、友達が「うちの父親がさぁ…」なんて話を聞く度に、“ああ、私には父の思い出がないんだなぁ”とどうしても考えてしまうようになった。あと意外にせつなくなるのが映画だったりする。特にハリウッドとかだとストーリーの中で、父子愛を描いた作品が多いんだよね。だからなんだか寂しさも相まって感動してしまうことも。 そんな感情があったからだろうか、いつのまにか私は年上の人とばかり付き合うようになっていた。でも普通に生活していて出会えるのは同年代の男の子ばかりだから、インターネットで相手を探した。メール交換から始まり、いい人がいたら何回かデートを重ねて付き合ったりしていた。 あと出会い喫茶なんてとこも出入りしてたな。基本的にあそこにいる子は援助目的の女の子が多いのだけど、私はそういうことは一切せずに、選んでくれたおじさんと食事に行くだけ。それ以上の提案をしてくる人は断ってたし、食事のみでお金をくれる人からも受け取らなかった。 そんな生活を続けているうちに、年上の男の人ともっと色々話してみたいと思ったのがキャバクラで働くきっかけになったんだよね。それでいざ働いてみると、おじさんの中にはお説教をしてくる人がたくさんいる。同僚の女の子はそういう客をみんな嫌がってるけど、私はそうは思わない。私のために言ってくれているんだろうなって。だから素直に謝ったり、わざわざありがとうございますってお礼を言ったりする。これは父親の愛情を受けてこなかったから、お説教されたいという心の現われなのかもしれない。今まで叱ってくれる人がいなかったから。それともしお店で素敵な年上男性と出会えれば、交際しようかなとも考えています。(取材/構成・篠田エレナ)
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芸能 2015年09月23日 16時41分
上方漫才界のエース“中川家” その原動力は?
『M-1グランプリ 2001』で優勝し、2010年には伝統と由緒ある“上方漫才大賞”を受賞。上方漫才界の将来を担うであろうコンビといえば、中川家だ。弟・礼二は元優秀な営業マンだけあって、その話術はピカ1。兄・剛と、安定性抜群の漫才を誇る。 ふたりがおもしろくなれたルーツは、貧乏な幼少期にあったといえる。家族4人が住んでいたのは、6畳と4畳半、風呂なしの文化住宅。銭湯に行くお金がもったいないと、家の玄関にタライを置いて、真横にある台所の湯沸かし器の蛇口にホースを突っ込んで、シャワーにした。さらに節約したいときは、4人で一緒に浴びた。場所が玄関なだけに、“入浴中”に回覧板を持ってこられることもあり、母は全身ズブ濡れで、尻を見せたまま、板を受け取った。 ツラいのは、誕生日だ。欲しい野球のグローブを買ってもらえず、素手で野球の仲間に加わった。何度もおねだりすると、ようやく買ってもらえたが、グローブが入っていた袋には「信用金庫」の文字が。取りだすと、グローブに「井上」と刻まれており、あきらかに井上さんという赤の他人のおさがりだった。 同じく、自転車も買ってもらえなかった。しかし、自転車がないと仲間と遊べないため、いつも全速力で走って、自転車に追いついた。走りきったあとも、苦しい表情を見せると次から誘ってもらえないと思い、必死で平気な顔を取り繕った。最終的に、自転車を買ってもらえたが、先の“グローブ事件”同様、何かしらのお下がり。今回は、ワイヤーなどで組み立てられた氷屋のリヤカーだった。 昼食代をもらえないときは、兄弟で近所の商店街を歩き、ランチタイムになると外に置かれるディスプレイを拝借した。最初は、白飯の上に乗っていた梅干しだけ。しかし、どんどん加速していき、完食してしまった。食堂のおばちゃんは、空になった皿を見て言った。「よぉ食べたなぁ」。さすが、大阪である。空腹をしのぐため、教科書を食べたこともある。いろいろ試した結果、文字数が多い国語がおいしいと判明した。 年1回の家族旅行は、いつも見知らぬ家族と相部屋になったり、バーベキューに行っても、持参したおにぎりを食べて帰ってきたり。涙なくしては語れないエピソードばかりの幼少期。ところが、笑いは0円だったことから、日常的にふれあっているおっさんやおばちゃんにツッコミを入れて、現在の中川家の原型を完成させた。 転んでもタダで起き上がらない浪速魂。中川家こそ、その体現者といえる。(伊藤由華)
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スポーツ 2015年09月23日 16時27分
イチロー 自己ワースト打率更新濃厚も、マーリンズ残留の可能性…
マーリンズのイチロー外野手が、自己ワースト打率を更新しそうな気配になってきた。 9月22日(日本時間23日)現在、イチローは413打席に立ち、376打数89安打1本塁打20打点11盗塁で、打率.237。9月の月間成績は、50打数8安打で、打率.160と苦しんでいる。イチローの自己ワースト打率は、13年の.262で、残り試合数を考えると、これを下回ることが濃厚になってきた。この調子でいくと、メジャー15年連続100安打達成に黄信号がともる。 今季、ヤンキースからマーリンズに移籍したイチローの役回りは“4番手外野手”。チームのレギュラー外野手は若手3人でガッチリ固定されており、かつナ・リーグには指名打者制がないため、その出場機会は激減するものと思われていた。ところが、レギュラー陣の故障、不振が相次いだ影響で、打席数は意外にも昨季の385を超えた。 イチローの今季基本年俸は200万ドル(約2億3930万円)だが、300打席到達で40万ドル(約4790万円)の出来高が支払われ、さらに50打席到達ごとに40万ドルずつが追加される。設定されているのは600打席までで、最大280万ドル(約3億3510万円)が得られる契約となっている。400打席をクリアしたため、すでに120万ドル(1億4370万円)の出来高をゲットした。 こと守備と走塁に関しては健在ぶりをアピールしているイチローだが、肝心のバッティングは、成績を見るまでもなく、衰えが見え隠れする。10月で42歳になるイチローと来季契約する球団があるかどうかは微妙なところだ。 イチローにとって、来季はメジャー通算3000安打が懸かった重要なシーズンとなる。たとえ、控え前提でも、なんとしてもプレーは続けたいだろう。 「マーリンズはすでにプレーオフ進出の可能性が消えました。通常なら、若手優先起用にシフトしてもおかしくないのですが、イチローはいまだスタメン主体の起用となっています。その獲得に動いたダン・ジェニングズ監督が、来季を視野に入れて使っていると見て取れなくもありません」(MLB通のスポーツライターA氏) 来季、ジェニングズ氏はGM職に復帰説もあれば、他球団のフロント入りするウワサもあり、その去就は流動的だ。前述のA氏によると、「ジェニングズ氏がマーリンズに残ることになれば、イチローも残留する可能性が高くなるのでは? この年齢と成績では、他球団がメジャー契約でオファーする確率は低いと思われます」と話す。(落合一郎)
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芸能 2015年09月23日 16時03分
漏れ聞こえて来た女優・黒木瞳監督作品の舞台裏
女優の黒木瞳が映画監督に初挑戦した「嫌な女」(来年公開)の舞台裏を、発売中の「週刊文春」(文芸春秋)が報じている。 同作は桂望実氏のベストセラー小説「嫌な女」(光文社文庫刊)を映画化。黒木が惚れ込んで映画化を熱望した原作で、女優の吉田羊と木村佳乃がW主演。境遇も立場も違う対照的な2人の女性を描き、吉田は人と打ち解けられず友達もいないまじめだけがとりえの弁護士・石田徹子役、木村は派手好きで社交的な天才詐欺師・小谷夏子役をそれぞれ演じる。 黒木は各メディアに対して、映画化について「私が、監督をしようと決めたのは、いうまでもない。『嫌な女』という小説に出会ったからだ」、「監督をさせていただくことは、身に余る光栄だ。とはいえ、今やクランクインを前に、私は極度の緊張感に包まれている」などとコメント。撮影は8月1日にクランクインしたというのだが…。 同誌によると、もともと黒木は木村が演じた役を熱望したが、さすがに黒木でも20代の役を演じるのは厳しく、監督初挑戦が決定。ベテランのスタッフたちが脇を固め、黒木が自ら口説いた来年の朝ドラ「とと姉ちゃん」を手がける西田征史が脚本を担当。 現場での黒木の“衣裳”は真っ青なパンツスーツ姿。木村の夫で少年隊の東山紀之が2人の娘を連れて陣中見舞いに来た際は、大興奮してしまいベテランスタッフたちは苦笑していたというのだ。 「黒木といえば、自身の出演作の海外ロケでたばこを吸いながら取材に応じていたという有名なエピソードがある“嫌な感じ”の女。周囲のサポートがないと監督としては全く機能しないことは誰もが思うところ。ただ、女優としての仕事がそれほど忙しくないので、プロモーションには大々的に協力してくれそうだ」(映画関係者) 黒木が監督として成功できるかが注目される。
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スポーツ 2015年09月23日 16時00分
“お試し起用”している余裕無し 原監督が岡本和真をスタメンにしない理由
ペナントレースも佳境を迎えたが、セ・リーグはさらに混戦を極め、4強がひしめき合っている。9月14日時点で、首位ヤクルトと3位巨人までのゲーム差は0.5。猛追撃を始め、首位まで3ゲーム差の4位広島まで優勝の可能性がある。 「巨人が前半戦のうちに混戦を抜けられなかった理由というか、いまも首位にあと一歩及ばないのは中継ぎ陣の崩壊が原因です。山口、マシソンの2人が揃って不振。クローザーの澤村も防御率こそ1点台だが、いつも走者を得点圏に背負っての苦しい救援が続いています。状況を一変させるだけの戦力も残っていません」(プロ野球解説者) そんな、沈滞しがちなベンチのムードを一変させる好機は一度だけあった。しかし、原監督はあえてそのカードを切らなかったのだ。 9月6日、対DeNAの試合前、テレビ局の取材クルーがいつもと違った動きを見せた。先日、プロ初アーチを放った高卒ルーキーの岡本和真(19)にカメラを向け続けたのだ。それも1社や2社ではなかった。理由は簡単だ。「今日、岡本がプロ初スタメンを果たすのではないか」との声が各方面から出ていたのである。テレビ各局は晴れ舞台に臨む高卒ルーキーの様子を捉えようとしていたのだ。しかし、試合前に交換されたスターティングラインアップ表に岡本の名前はなく、しかも試合は雨天中止になってしまった。 「巨人の高卒ルーキーがプロ初安打を本塁打で記録したのは1966年以来、49年ぶり。6日のスポーツ紙の巨人コーナーの反響も大きかった」(ベテラン記者) 話題性抜群だった生え抜きのスター候補のスタメンデビューを遅らせたのは、勝ちたかったの一点に尽きる。同日にスタメンで三塁手として起用しようとしたのは、村田修一(34)だった。原監督は将来性と話題性の高卒ルーキーよりも、不振でも実績のあるベテランを選んだのである。 「いま追撃の手を緩めてしまえば、このままシーズンが終わってしまう。岡本をスタメンで使って結果が出ればチーム全体は盛り上がるが、守備難の岡本を使うのはあまりにもリスクがありすぎる。岡本が大事なところで失策したら、イップスになって将来性まで潰してしまうかもしれない。村田と岡本を天秤に掛け、安全策を取ったんでしょう」(同) 村田は少しずつだが打率を上げている。得点圏打率が2割を切っているため、好機でバントのサインを出したり、容赦なく代打を送るのも、原監督が勝ちたいからだろう。 「原監督は今季限りでの退団も意識している。契約任期が今年で切れるのは分かっていましたし、いまのところ来季のことでフロントから何も打診がないため、退団も止むなしと考えるようになりました。優勝して退くのと、負けて交代するのとは全然違う」(同) 原監督は4月に25歳の中井大介を四番打者に抜擢したが、1試合限りで諦めている。これはシーズン序盤戦だからできたテスト起用であり、終盤戦に一軍昇格してきた岡本にはそのチャンスを与える余裕はないというわけだ。岡本のスタメンデビュー。ガッカリしたのはテレビ局員だけではなかったが…。
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芸能 2015年09月23日 15時40分
どん底まで落ちて見事にはい上がった柳楽優弥
NHKの朝ドラ「まれ」で、若くして司法書士の資格を取得しながら、悠々自適に生きる池畑大輔役を熱演しているのが俳優の柳楽優弥だ。 02年に「友達が所属していて楽しそうだった」という理由で芸能プロダクション入りを希望し、柴咲コウや竹内結子らが所属するスターダストプロモーションに応募。映画「誰も知らない」が初オーディションだったが、是枝裕和監督から「目に力がある」としていきなり主役に抜擢された。 そして同作は04年に「第57回カンヌ国際映画祭」のコンペティション部門に出品され、当時14歳だった柳楽は同映画賞の史上最年少で男優賞を獲得。帰国後はメディアの取材が殺到するなど、一躍時の人となった。05年には「星になった少年 Shining Boy & Little Randy」、06年には「シュガー&スパイス 風味絶佳」、07年には「包帯クラブ」と毎年主演映画が公開され、そのまま成長すれば、若くして日本を代表する俳優になりそうだったが、人生そううまくはいかなかった。 「当時の柳楽は、ドラマで共演し、後に塀の中に落ちることになった元俳優の押尾学にあこがれ、悪ぶっていた。そのうち、現場での態度の悪さが目立つようになり、仕事のオファーが入らなくなっていった」(映画関係者) 08年ごろには体調を崩し、同年8月末、自宅にて安定剤を大量に服用し衝動的に自殺を図り病院に運ばれたものの同日退院。後日「家族との口論が原因」と自身のホームページで公式発表したが、まったく仕事がなくなり引退説が飛び交うようになった。 10年1月には女優の豊田エリーと結婚し同年10月に第1子となる女児が誕生。「2009年夏頃には体重が82kgあったが、2010年7月から約2か月間で25kgの減量に成功。さらに、父親になったことで責任感が芽生えたのか、洗車や居酒屋のバイトで社会勉強を経て俳優に本格復帰。今や、持ち前の演技力を存分に発揮している」(同)。 今月26日公開の主演映画「合葬」は「第39回モントリオール世界映画祭」のワールド・コンペティション部門に正式出品されることが決定。再び国内外で脚光を浴びることができるか?
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社会 2015年09月23日 14時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第142回 続・亡国の農協改革
9月8日、筆者渾身の1冊である『亡国の農協改革 日本の食料安保の解体を許すな』が、飛鳥新社から刊行になった。 亡国の農協改革の中身については先週も取り上げたが、今回は改革推進に際した「レトリック」に焦点を当ててみたい。例えば、読者は農協改革に関連し、以下のレトリックを耳にしたり目にしたりしたことはないだろうか。 「全農(全国農業協同組合連合会)が農薬や肥料を農協や農家に“高く売っている”。だから、農協改革が必要だ」 筆者は、農協改革の推進派、あるいは賛同派から、繰り返しこのレトリックを聞かされた。聞き手が「何も考えていない。何も知らない」場合、レトリックがもたらす“印象”にコロリと騙され、 「全農はけしからん。やはり、農協改革が必要だ」 などと、まさに“愚民”として思い込まされることになるわけだ。 全農は、確かに農産物の流通において3割前後のシェアを維持しており、さらに肥料農薬といった生産資材の市場でも5割前後を占有している。とはいえ、別に「市場を独占している」わけでも何でもない。 そもそも、農協にせよ農家にせよ、全農から肥料や農薬を買う「義務」はない。農家や農協にとって、全農から生産資材を買うか否かは「自由」なのである。全農の販売価格が高いと感じるならば、他の業者から購入すれば済む話であるし、実際にそうされている。 むしろ、全農が批判されるケースがあるとすれば、農産物市場や生産資材におけるシェアを活用し、ダンピング的な安売りを展開。他業者を排除しようとした場合であろう。市場シェアが大きい全農は、例えば、 「高い市場シェアを活用し、一部の分野において原価を下回るダンピング販売を実施し、競合他社を駆逐する」 といったビジネスモデルを採用することが可能なのだ。 全農が競合を駆逐するために「極端に安い価格で、生産資材を販売している」ならばともかく、「高く売っている」ことで批判されるいわれはないだろう。全農の商品価格が高いならば、他の業者から購入すれば済む話だ。 ちなみに、全農の生産資材が他の業者より高くなるケースは確かにある。何しろ、全農は農協や農家に「営農指導」というサービスを無償で提供している。さらに、全農は配合飼料等の成分について、基準値よりも余裕をもたせているのだ。結果的に、全農の商品価格が高くなるわけである。すなわち、農業全般に対するサービスを提供している全農と、単純に生産資材の販売のみを提供する一般業者とでは、業態が違うのだ。 また、連載の第137回でも取り上げた通り、「日本の農業や農協は保護され過ぎている」というレトリックも、明確に間違いだ。ヨーロッパ諸国の農家の所得に占める直接支出(要は税金からの支払い)の割合は、軒並み90%を超えているが、日本は15.6%にすぎない。さらに、多額の輸出補助金を支出しているアメリカは農業予算が農業生産(GDP)に占める割合が65%であるのに対し、日本は27%にすぎない。 主要国の中で、日本ほど農業を保護していない国はない。それにもかかわらずわが国では、 「日本の農業は保護され過ぎだ!」 というレトリックがまかり通り、革命とでもいうべき農協改革を推進する下地が醸成されていった。 ところで、日本は世界最大の食料輸入大国である。2013年のわが国の農林水産物の輸入額は6兆1365億円と、1960年比で10倍に膨張している。農産物輸入額で見ると、アメリカ、中国、ドイツに次いで第4位となっている。とはいえ、米中独の3カ国は、輸入も多いが、輸出も少なくない。 食料の輸入額から輸出額を差し引いた「純輸入額」で見ると652億ドル('13年)と、文句なしで世界最大なのだ。わが国は世界の中で突出した「食料輸入国」なのである。 もっとも、別に日本の農業に関する「需要」が増えているわけではない。日本の農業のGDP(生産=需要)は、'94年は8兆円だったのが、近年は5兆円程度で横ばいだ。 この状況で、安倍政権や農林水産省は農業の6次産業化を進めているわけだから、あきれてしまう。6次産業とは、農業生産(1次)、加工(2次)、そして流通・販売(3次)の全てを農家が担い、1+2+3で6になるという、いかにも現場を知らない学者が名付けた机上の空論的な“戦略”である。 全体の需要が拡大していない状況で、農家や農業が農林水産省にあおられ、2次産業や3次産業に「新規参入」すると何が起きるだろうか。間違いなく、既存の需要(=所得)の奪い合いが発生することになる。すなわち、すでに農産物の加工や流通、販売の産業から所得を得ている別の日本国民から、所得を奪い取る結果になってしまうのだ。 需要が拡大しておらず、新たな付加価値が提供される余地が乏しい以上、そうならざるを得ない。 「だからこそ、日本の農家は世界を目指すべきだ」 などと言われそうだが、ならばアメリカ並みの輸出補助金の制度を整えるべきだ。とはいえ、その手の話は全く聞こえてこない。 要するに、日本国民は農業や農協の実態を知らないのだ。結果的に、わが国は食糧安全保障を脅かす農協改革を推進している。この現実を、できるだけ多くの国民に知ってほしく、筆者は『亡国の農協改革』を書いたのである。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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その他 2015年09月23日 14時00分
小松基地航空祭 ブルーインパルスの曲技飛行などにファン14万7千人が来場
石川県小松市の航空自衛隊小松基地で21日、『15航空祭in KOMATSU』があり、家族連れや航空ファンら14万7千人が来場した。 会場にはヘリコプターや輸送機、ジェット練習機、偵察機、戦闘機などが展示され、F15戦闘機による編隊飛行や機動飛行をし、航空祭を記念した塗装機も登場し注目を集めた。 午後には、航空自衛隊アクロバットチーム『ブルーインパルス』が曇り空ながら曲技飛行を行い来場者を魅了した。
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芸能 2015年09月23日 12時00分
土屋アンナ舞台降板訴訟 原告が裁判長期化狙いで泥沼化か
歌手でモデルの土屋アンナ(31)とプロデューサーで演出脚本家の甲斐智陽氏(64)が11月9日に裁判所で直接対決することが決まった。 甲斐氏が、プロデュースした舞台『誓い〜奇跡のシンガー』を土屋が降板したことで、甲斐氏側が、2013年10月に約3千万円の損害賠償を請求して裁判になっていた。 その後、原告側の甲斐氏も、土屋側に名誉毀損で訴えられた。甲斐氏が『ANNA』という曲を作り、“ANNAはどうしようもない女”や“すっぴんはしわだらけ”という歌詞が問題になった。 甲斐氏は「しゃれで作っただけ。レコーディングして8月の僕の誕生日ライブで歌ったけど、本人と特定したわけじゃない」と言っていたが、時期が時期だけに、誰もが土屋のことを思い浮かべるような内容だった。 この二人に裁判所から「土屋側が解決金200万円を支払う」という和解勧告が出された。土屋側はこれを受け入れたが、甲斐氏側は拒否。そしてついに、土屋と土屋の母、甲斐氏の3人が出廷することになった。 土屋は「裁判所に任せっぱなしになっているけど、やることはきちんとやりますよ」と発言し、さらに「どっちにせよ、結論が出て、そういう嫌なニュースがなくなる方に向かってくれればいいんだ。もう何でもいい」と、早く裁判を終わらせたい意向を示した。 「土屋は裁判を起こされて、仕事が減ると思っていたようだけど、全く影響がなかった。土屋の強気発言には、そういう経緯があるからです。CMも問題なく継続され、仕事も順調。勝ちでも負けでもいいので、早く終わらせたいというのが本音でしょう。少し非を認めて、和解に応じようとしたぐらいですから」(女性週刊誌記者) 一方で甲斐氏の弁護士は「これから十分に対策を練っていく。甲斐氏には自分の正しい主張は言ってほしいが、不規則発言だけはやめてほしいと注意した」と、コメント。過去の法廷で、甲斐氏が感情をむき出しにしたことへの注意を促していた。 「当初の和解金額を大幅に超える金額にはならない気がする。そうなると、甲斐氏側が控訴という事になるのかな。だから、裁判はまだまだ長引くだろう。そうなると、ぶっちゃけキャラの土屋が、どんな話で裁判官を味方に付けるかがカギだね」(プロダクション関係者) 1カ月半後の裁判に注目だ。
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