社会
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社会 2017年12月13日 10時00分
米朝核戦争 死者は東京180万人、ソウル203万人の地獄絵図
11月29日未明、北朝鮮が首都平壌近郊の平城付近から大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』1発を発射した。これはガスが充満した部屋でマッチを擦るような行為だ。12月は在韓米軍家族がクリスマス休暇で韓国を離れる時期。米国は“最も戦争をやりやすいシーズン”に突入する。 「12月4日から8日にかけて、史上最大規模の米韓合同演習『ビジラント・エース18』が行われています。北朝鮮は毎回演習に強く反発しますが、来年2月の平昌冬季五輪開催の機に乗じて一層の挑発行動に出る可能性が高い。というのも、米国との交渉では平和条約や不可侵条約といった“体制保証の約束”を得るよりも、先に米国中枢部を直撃できる核弾頭搭載のICBMを完成させた方が、米国との交渉で優位になると考えているからです」(軍事アナリスト) しかし、そのためには(1)7度目の核実験、(2)核の小型化と大気圏突入時の弾頭の姿勢制御や、その際に空気が圧縮されて生じる約7000度の高熱に耐え得る技術の確立、(3)潜水艦発射ミサイル(SLBM)による第2撃能力の保有、これら3つのハードルを突破しなければならない。 「12月30日の金正恩委員長の軍最高司令官就任記念日や、来年には建国70年の記念行事がありますから、それまでに『国家核武力の完成』を宣言するつもりでしょう。米国中枢を狙うためには、軍事パレードで登場した3段式の『火星13』の向上や7回目の核実験が必要。地下実験では弾道ミサイルに載るほど小型化したと米国に示せないので、核を搭載して発射し、海上で爆発させるかもしれません」(国際ジャーナリスト) 経済制裁によって北朝鮮の核・ミサイル開発が止められないことは『火星15』の発射ではっきりした。開発費用は「年200億円強」と見積もられているが、これは日本が購入予定のF35Aステルス戦闘機(1機約146億円)の1.4機分でしかなく、北朝鮮のGDPの0.6%程度にすぎない。兵卒を飢えさせても平気な体制下では、経済制裁などヌカにくぎだ。 経済的圧力に効果がなければ、軍事的圧力に力点を移すしかない。ホワイトハウス内では対北強硬派が勢いを増しているが、そこへダメを押す人事情報がもたらされた。トランプ政権の中枢、元海兵隊大将のマティス国防長官とケリー大統領補佐官、現役陸軍中将のマクマスター安全保障担当補佐官とティラーソン国務長官のうち、穏健派として知られるティラーソン氏が更迭されると米紙ニューヨーク・タイムズ電子版が11月30日に伝え、後任には現在CIA(中央情報局)長官を務めるポンペオ氏が起用されるという内容だ。 「CIAは米海軍の『SEALs』に匹敵する特殊部隊『SAD』(特別活動部)を有しています。'11年にビンラディンを殺害したのは両者の合同作戦によってです。ポンペオ氏は諜報部員が集めた北朝鮮の秘密情報を把握しているはずで、彼を登用することによって『すぐにでも斬首作戦を実行するぞ』と金正恩委員長を威嚇する意味合いもあるでしょう」(在米日本人ジャーナリスト) 米韓合同演習『ビジラント・エース18』は、訓練から直ちに実戦に切り替えることが可能だ。他方、中国も11月下旬、中朝国境を守備する北部戦区(旧瀋陽軍区)で大規模な軍事演習を行った。さらに零下17度の極寒状況にある内モンゴル自治区でも“冬の軍事作戦”を想定した訓練を行い、また遼寧省丹東と北朝鮮の新義州を結ぶ鉄橋を“工事”のため一時閉鎖する措置を講じるなど、軍事・経済両面で圧力をかけている。 「北朝鮮の地下の核ミサイル基地をたたくには、赤外線センサーで場所を特定するのですが、それは地表の温度が下がる真冬が最も容易とされています。もし米韓軍が北朝鮮を攻撃すれば、滅亡が迫った北朝鮮は自暴自棄となり、急いで残った核ミサイルを韓国や日本に向けて発射する公算が高いでしょう」(前出・軍事アナリスト) 10月初め、米ジョンズ・ホプキンス大の米韓研究所が運営するサイト『38ノース』が出した米朝軍事衝突時の被害想定は、まさに地獄絵図だ。 「通常の核ミサイルがソウルや東京に落ちた場合、それぞれの死者は『ソウルで最大約116万人、東京で最大約95万人』と算出され、北朝鮮が9月に実験した水爆の場合は、『ソウルで最大約203万人、東京で最大約180万人』に達するという恐ろしい内容でした。日韓をターゲットにするノドン(準中距離弾道ミサイル=MRBM)はすでに実戦配備済みです」(同) 核による均衡、つまり相互確証破壊は、「先制核攻撃すれば自らも悲惨な目に遭う」と、米ソ冷戦時代の首脳のように冷静に判断する常識を持った相手にこそ成立するもの。正恩委員長に当てはまるとは思えない。 「北朝鮮は'16年頃から米国や韓国に対する先制核攻撃を公言してきましたし、日本へは今年9月13日、『列島の4つの島を核爆弾で海中に沈める』と威嚇しています。北朝鮮は事実上の宣戦布告をしているわけで、先制核攻撃されても文句を言えません」(前出・国際ジャーナリスト) 日韓の被害を最小化、もしくはゼロにすることを考えるならば、米軍が「戦術核」を用いた先制攻撃を仕掛け、北朝鮮の核関連施設を破壊する以外に方法はない。東アジアはオリンピックどころではないのだ。
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社会 2017年12月12日 18時00分
APAホテル事件から芋づる式「地面師村」100人の共犯者
迷宮入りと思われていた事件がついに全容解明へ向け動き出した。警視庁捜査2課は11月29日までに、大手ホテルチェーンを運営するアパグループの不動産会社アパから、東京・赤坂の土地売買を巡り約12億5000万円を騙し取ったとして、“地面師グループ”の主犯格の会社役員・宮田康徳(55)ら10人を、詐欺容疑などで再逮捕した。 これにより、昨年発生した“新橋女性資産家失踪事件”、さらに、大手住宅メーカー・積水ハウスが約63億円を騙し取られた詐欺事件が、解決へ向け急展開の兆しを見せ始めているのだ。 地面師グループとは、土地建物の持ち主の知らないうちに、本人になりすまして転売し、代金を騙し取る詐欺集団を言う。 「この手の被害は、問い詰められたとしても“自分も被害者だ”と言われれば立件することが難しいとされる。グループは“地面師村”とも呼ばれ、めぼしい土地を探し出す者、書類を偽造する者、持ち主になりすます者など役割分担され、情報交換を含め100人を超える関係者が複雑に絡み合い、どこかで結びついているとされる。そのため、これまで起きた詐欺事件でも、地道にたどっていくと繋がっている可能性が高い。捜査関係者は、アパホテルの今回の再逮捕から、新橋と積水ハウスの件まで一挙解決に動き出しています」(全国紙社会部記者) アパホテルの件では、'13年6月頃、東京都港区赤坂2丁目に放置されていた駐車場約396平方メートルの土地を、宮田容疑者が千代田区の不動産業者K社に持ち掛けたことに始まる。 「所有者はすでに死亡していたが、宮田容疑者は“この土地は兄弟(当時87歳と84歳)が所有しており、本人の承諾を得ている”と騙して、K社が仲介となりアパホテルが買い取ることが決定した。同年8月6日には、契約締結と同時に決済される運びとなり、正午にメガバンクの赤坂見附支店に宮田容疑者、なりすまし犯の兄弟、不動産業者、弁護士や司法書士らが一堂に会して売買が成立。登記申請が行われたのです」(捜査関係者) しかし売買成立の6日後、アパホテルに法務局から“契約した際に交わした書類は偽造”との連絡が入り、地面師グループに騙されていたことが発覚したのだ。 その後、兄弟役のなりすまし犯は行方不明、宮田容疑者も海外へ逃亡したと見られていたが、今年2月、宮田容疑者が同様の手口で、神奈川県横浜市の不動産業者から7000万円を騙し取った疑いで逮捕された。 「これによってアパホテルの件についても宮田容疑者の関与が明らかとなり、グループ一味の逮捕へとつながったのですが、10人のうち唯一、女だった容疑者Aが、兄弟のなりすまし役となった老人2人の世話役だったことも判明している。しかも、そのAが新橋(東京都港区)の件で犠牲となった資産家女性の高橋礼子さん(当時60)のなりすまし役だった可能性が高まっており、警察が追及中だというのです」(経済ジャーナリスト) その新橋の件では、東京五輪に向け再開発が進む新橋4、5丁目一帯に土地を所有していた大地主の高橋礼子さんが、昨年3月に失踪。その7カ月後、新橋内の自宅付近で白骨化した状態で発見されている。 「高橋さんは失踪前、周囲に『土地なんか売っていない』と語っていたという。そのため事件に巻き込まれた可能性が高いとして捜査が進められていましたが、やはり高橋さんが所有していた時価6億9000万円の土地が、地面師グループによって売買されていたのです。警察ではいま、関係者にAの顔写真を見せて回り、確認を急いでいるとのことです」(前出・記者) さらにもう一つ、地面師グループの被害に遭い迷宮入りが囁かれていたのが、積水ハウスの件だ。 同社は今年6月、不動産業者を介し、東京都品川区西五反田2丁目の約2000平方メートルの土地を買い取る契約をし、63億円を支払った。しかし、こちらも法務局に所有移転の登記を申請したところ、所有者提出の書類が偽造と判明したのだ。9月に警視庁が同社の告訴状を受理し、捜査に乗り出している。 「同社が購入するはずだった土地は、JR山手線五反田駅近くの元旅館。実際の所有者である女性Nさんは、知らない間に本人確認用の印鑑登録証明書やパスポートが偽造されていた。ただし、今回のアパホテルの再逮捕者のつながりにより、代金を受け取ったNさんになりすましたと思われる女の身柄が、すでに確保されたという。今後、ここからさらに芋づる式で逮捕者が出る可能性は大です」(同) 首都圏では土地価格の高騰が続く中、50件を超える地面師グループによる被害が、いまだ未解決のままだという。 「犯罪に手を染める金儲け集団は、大概が最終的に金の取り分を巡って仲間割れを起こし、それが発端で尻尾を出す。積水ハウスの件でも、すでにグループが分裂したとの情報が入っている。アパホテルの件を機に、根こそぎ逮捕できる日は近いのではないか」(捜査関係者) 高齢者をターゲットにした“地面師村”の壊滅に期待したい。
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社会 2017年12月12日 14時00分
大阪『高島屋』現存最古の百貨店が複合施設ビルに「本丸落ちる」の嘆き節
「大阪暮色や」浪速っ子が嘆いている。日本橋の高島屋東別館(大阪市浪速区)が、2019年の完成を目指し、ホテルと商業施設の複合ビルとしてリニューアルオープンするという。 高島屋東別館は'37年に旧松坂屋大阪店として建設された、日本最古の百貨店建造物。アールデコ調の重厚な佇まいは、周辺一帯のシンボルとなっている。しかし、'68年に運営が高島屋に移ってからはデパート営業は行われず、1階の外周部に飲食店、2階部分は高島屋資料館、他は事務所として使用され今後の動向が注目されていたが、リニューアルについては地元の反応も様々だ。 「“インバウンド銀座”の道頓堀や難波がすぐそばということもあって、それを指を咥えて見ているだけでは仕方ないということでは。地域の発展にもプラスになることは間違いないでしょうね」(日本橋でんでんタウンの電器店経営者) その一方では、こんな声も。 「堺筋では昔からのビルや店がどんどん潰されて、みんな外国人向けの何かに変わっとる。せやけど、高島屋の別館だけは大丈夫と思ってた。何やら本丸を落とされたような気分や」(道頓堀の老舗飲食店店主) リニューアルの詳細については様々な情報が飛び交っているが、公式な発表はまだない。周辺関係者によれば、運営主体として現在交渉しているのは、シンガポールの不動産大手・キャピタランド社。同社は別館の豪華な空間を活かし「サービスレジデンス」と呼ばれる、中長期滞在者向けの宿泊施設を展開するものと見られている。 「サービスレジデンスは、ホテル仕様のウイークリーマンションということですが、とびっきりの豪華版。ターゲットは当然、外国人観光客で、しかも富裕層」(外資系ホテル関係者) ゴーサインが出れば、ミナミ・堺筋エリアでは、新今宮に'22年に開業する星野リゾートのOMOホテルと並び、注目を集めることになりそうだ。 「ただし、外国人観光客がリーズナブル志向に変わりつつある中、豪華ホテルの受けがどう転がるかは未知数。問題は、東京五輪後の変化への対応です」(ホテル関係者) 外国人観光客の増加で、ホテルの建設ラッシュが続き、日ごとに街の姿が変わりつつある大阪ミナミ。浪速の灯がまた一つ消えようとしている。
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社会 2017年12月12日 10時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 高所得者増税のまやかし
政府与党は、2018年度の税制改正で、低所得者の減税財源として高所得者の増税を検討している。私はこれまで、一貫して庶民の減税と高所得者の増税を主張してきたから、一見すると、私の主張と政府の税制改正の方向性は一致しているようにも見える。しかし、実は政府がこれからやろうとしている高所得者増税は、とんでもないまやかしなのだ。 例えば、政府は給与所得控除の圧縮を考えている。給与所得控除というのは、サラリーマンに認められた必要経費の概算控除だ。現行税制では、年収180万円以下の部分は収入の40%、180万円から360万円までの部分が30%、360万円から660万円の部分が20%と、「経費率」が徐々に下がっていく。 なぜ下がっていくのか。仕事の時に着る服を例に考えてみよう。年収が低くても、一般的にはとりあえずスーツは買わなければならないから、低年収のサラリーマンにとっては、大きな負担になる。昇進して年収が増えたら、少し上質のスーツを買う必要がでてくるが、それでも年収が2倍になったら、2倍高いスーツが必要かというと、そうでもない。だから、年収が高まるほど、それだけ経費率が下がる形になっているのだ。 5年前の税制では、この給与所得控除は、いくら年収が高くても最低5%が認められていた。ところが、4年前から、年収1500万円で給与所得控除が頭打ちになり、昨年は1200万円、今年は1000万円で頭打ちとなった。つまり、年収1000万円を超えると、稼ぐのに一切、経費がかからないと判断していることになる。 しかし、それは果たして本当だろうか。宴会や同僚の結婚祝いなど、社内での地位が上がれば、負担すべき金額は当然増えていく。経費ゼロというのは、あり得ないのだ。 ところが、自民党税調では、この給与所得控除の頭打ちを、年収800万円〜900万円に引き下げようとしている。もちろん、読者の多くが「自分の年収は、そこまで届いていないから、増税したって構わない」と考えるだろう。しかし、こうした“小金持ちサラリーマン”が増税される一方で、本当の金持ちは野放しになっている。 いい例が、芸能人や金融長者たち。彼らは、みな自分の会社を持っている。事業に必要だという名目が立てば、すべて経費で落とすことができる。何千万円もするような高級外車に乗っていても、それは経費で落ちるのだ。サラリーマンの必要経費に上限を設けるのであれば、会社の経費で乗る車に対しても、500万円までといった上限を設けるべきだ。 また、税率も問題だ。サラリーマンの場合、年収1800万円を超えると40%の税金がかかる。別に住民税も10%かかるから、収入の50%が税金に持って行かれる勘定だ。一方、本当の富裕層は、収入の大部分を株式の配当や譲渡益が占めている。こちらは、分離課税で、住民税込みの税率が20%にすぎない。何十億円稼ごうと、税金は20%なのだ。 こうした事態を踏まえれば、低所得層の減税財源確保は容易だ。すべての所得を合算して、累進税率を適用する総合課税に移行すればよいのだ。
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社会 2017年12月11日 15時00分
天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 鈴木善幸・さち夫人(上)
前任の大平正芳首相が昭和55年(1980年)6月の衆参ダブル選挙のさなかに急死したのを受け、後継の座に就いたのが鈴木善幸であった。当時、「ロッキード裁判」を抱え権力維持に必死の「闇将軍」田中角栄元首相が、自らの影響力保持のため、コントロールの利く鈴木を半ば強引に総理のイスに押し上げたものだった。 半ば強引というのは、鈴木は元々、強いリーダーシップを発揮するタイプではなく、佐藤栄作政権下でじつに政府・自民党の“まとめ役”としての総務会長を通算10期も務めるなどの調整力が持ち味。衆目の見るところ「総理の器」ではなかったことによる。ために、国民からは「ゼンコー・フー(鈴木善幸とは何者)?」との声も出たのだった。 一方で、自民党内の反田中勢力からは「田中のカイライ政権そのもの」との声を浴び、政権は2年余に及んだが、その間、目指した「行財政改革」はほとんど実らなかったものだった。 夫人の鈴木さちは、「漁業」が縁で結ばれた。 日中戦争さなかの昭和14年、岩手県海浜部の山田町出身の鈴木は時に28歳、疲弊する漁村の救済に情熱を傾け、全国漁業協同組合連合会(『全漁連』)の職員であった。そこに入る前は農林省の水産講習所に通い、ここでは「秀才」と謳われていた。 一方のさちは、20歳、函館水産学校校長の長女で性格はざっくばらん、機転の利く辛抱強い娘であった。東京・赤坂の乃木神社で挙式した。 しかし、箱根と決めた新婚旅行先からして、さちにとっては仰天の日々が待っているのだった。元鈴木派担当記者の証言がある。 「鈴木を慕っていた漁業関係の若者たちが、なぜか宿泊先の旅館についてきた。夜になっても、鈴木はこうした若者たちと“漁業の近代化”について口角泡を飛ばし合ったり、碁を打ったりで、新婚“初夜”もヘチマもなかったそうです。また、新婚旅行から帰った新居でも同様で、夜は必ずと言っていいくらいこうした若者が訪れてくる。 夫人はというと、これら豪傑たちの飲み食いの世話から彼らの薄汚れた六尺フンドシの洗濯まで、ただただ黙々とやっていたという。夫人は、あの当時を振り返って、『この結婚は1、2年ももてばよかったと思っていた』と言っていた」 六尺フンドシといっても幅は一尺はあり、どこの何者かも分からぬ男どものそれを何本も洗うのだから、まずはさちが夫をいかに慕っていたかが分かる。いまのように電気洗濯機の時代ではなく、タライに洗濯板、石鹸でゴシゴシが新妻の“日課”では、今様の新妻なら早々に逃げ出して当然のところであろう。 しかし、こうした新婚時代を乗り切った結婚8年目、さちは妻として大きな転機を迎えることになった。「先々、うまくいけば『全漁連』の会長ぐらいにはなるかも知れない」程度にしか考えていなかった夫が、突然、衆院選に出ることになったからであった。鈴木は、昭和22年4月の戦後2回目の総選挙に出馬することになったのである。 「国会に水産議員を!」の熱望を担って、「全漁連」の推薦を受けたのである。当初は革新系無所属での出馬予定だったが、無所属では院内活動に限界があるとし、最終的には社会党からの公認候補となったのだった。 選挙は終始、苦戦であった。当時の中選挙区〈岩手1区〉は広く、鈴木は「浜のゼンコー」を売りに全力投球していたことで、盛岡市など内陸部の大票田に食い入る余地がなかったことが大きかった。内陸部にトラックを入れて「鈴木をよろしく」などとやると、内陸部を地盤とする対立候補陣営から「鈴木? そんなもんは知らん。陸(おか)のスズキなんちゅうもんは見たこともない。スズキは海のもんだべや」と、まったく相手にされなかったのだった。時に、さちはどう対応したのか。前出の元鈴木派担当記者の証言である。 「夫人は長野県出身で、当時は“ヨソ者”扱いもあっただけに、あまり選挙区には入らなかった。浜のほうの後援会でのあいさつ程度だったが、ここでのスピーチは鈴木より数段うまかったと言われている。県民の気質に合った“魚臭さ”“土臭さ”をユーモアたっぷり鮮やかな言葉づかいでやり、大好評だったそうです。歴代総理夫人のうちスピーチのうまさナンバー1は、政治部記者の誰もが認めるところだった」 開票の結果、鈴木は苦戦の末、定数4の最下位でかろうじて初出馬当選を果たした。時に37歳。このときの当選同期には田中角栄、中曽根康弘らがいる。 しかし、どうしたものか、鈴木は2回目の選挙には社会党を離脱、なんと吉田茂率いる与党の民自党からクラ替え出馬することになる。革新から保守への、まさに「コペルニクス的転回」との批判を浴びた。鈴木同様、妻・さちの正念場でもあったのだった。=敬称略=(この項つづく)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
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社会 2017年12月11日 10時00分
超高齢化社会で2兆円市場へ 小売・食品業界がせめぎ合う介護食バトル
65歳以上の高齢者人口が約3400万人となり(2016年)、'25年には3600万人で3人に1人が高齢者となる日本。そのため今、介護食業界が新未来産業として大注目され、食品業界はもちろん、異業種を巻き込み続々と新規参入が相次ぎ、“介護食戦争”が勃発しつつあるという。 最近の動向を、食品業界アナリストが、こう解説する。 「高齢者は、噛む力や飲み込む力が低下したことによって食が細くなり、必要な栄養が足りていない。そうした人のためにカロリー摂取や栄養バランスなどを考慮した介護食は、これまで一部の食品業社が取り組んできました。しかし最近、栄養バランスがいいことから、介護食が要介護者ばかりでなく、普通食を摂れる高齢者の間でも好む人が増え、需要が高まっているのです。取り入れる手段も、自宅宅配や施設や病院での配食、スーパーやドラッグストアなどでの購入など、裾野は拡大しています」(食品業界関係者) 現在、約1200億円という介護食の市場規模は、近い将来、1兆円から2兆円に急成長すると分析するシンクタンクもあるほどだ。そのため今、新規参入業者が続々と現れているというわけだ。 各企業はどう動いているのか。まず、約20年前から介護食を手掛けてきたキューピー。 「高齢者の噛む力、飲む力には格差がある。同社はその力に応じて区分した、ユニバーサルフード区分に沿った“やさしい献立”シリーズを開発し、介護者、被介護者らから多くの支持を集めている。味付けも商品ごとに実に丁寧で多彩。飽きがこないための工夫のほどが窺えます」(同) 明治でも、介護食に力を入れる。 「三度の食事にプラスαする栄養食として、ストローで飲める『メイバランス』シリーズがある。また『ごろっと野菜』シリーズは、一袋35〜80グラムを目安にした様々な野菜を、ポトフ、カレー、スープなどで補給できるように工夫している」(同) 明治に対抗してか、森永乳業もグループのクリニコが、介護食『やわらか亭』シリーズに親子丼、しょうが焼き、角煮丼など、肉メニューを充実させている。 一方の小売スーパーも、介護食に力を入れ始めた。イオンは、シニア向け各種イベントや商品の品揃えに積極的だ。例えば開店前、高齢者向けに体操イベントを取り入れる店舗もある。 「イオンでは、これまで20品目だったプライベートブランドの介護食を'18年2月に40品目に倍増し、さらに系列のドラッグストアなどでも積極的にPRするという。前年比10倍の10億円の売り上げを目指しているといいます」(経営アナリスト) 小売では他に、イトーヨーカ堂も介護用品売り場『あんしんサポート』コーナーを置く店舗を中心に、介護食の充実を図る動きを見せている。 「また、食品関連企業、例えば、アサヒビール系列のアサヒグループ食品も、“いつまでもおいしく”“栄養バランス”などに力点を置いた『バランス献立』シリーズ33品を、今年9月から発売開始している。歯茎でつぶせるすき焼き、舌でつぶせる鯛雑炊、噛まなくていい牛肉などがそれで、パック入りを平均180円前後で売り出し、かなり好評を得ているといいます」(前出・食品業界関係者) アサヒグループ食品では、'20年度までにシニア向け食品の売り上げ目標を50億円として攻勢をかけるという。 また、ボンカレーでおなじみの大塚食品では、カレーなどの1食100キロカロリーという『マイサイズ』シリーズを発売した。 「通常のレトルト食品と変わらない噛み応えや味付けでありながら、高齢者が控えたい塩分やカロリーを抑えてあるのが特徴。介護食と健康食の、ちょうど中間を狙ったものです」(同) 意外な外食チェーンも、介護食に参入している。牛丼の吉野家だ。高齢者施設や病院の給食、介護食などを手掛ける三井物産系列のエームサービスと組んで、2月から高齢者向け『吉野家牛丼』を提供し始めている。 「冷凍食品『吉野家のやさしいごはん 牛丼の具』がそれ。やわらかタイプと、噛まなくて済むきざみタイプの2種類を、まずは、介護施設向けに売り出している。食した人たちの脳裏に昔、食べた味が残っているのか、完食する人が多いという。吉野家では当面、700万食を目標とするというが、反応のよさを受け、今後、それを上回る需要拡大も見込めると強気のようです」(同) まだ1000億円台と全体のパイが少ない介護食は、「そのほとんどの販売ルートが通販というのが現状」(関係者)という。これが店頭販売の普及によって、爆発的な拡大が始まるのは間違いなさそうだ。
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社会 2017年12月08日 10時00分
手間も金も掛かる「ハガキ架空請求詐欺」が流行るワケ
「国民訴訟通達センター」などと聞くと公的機関のような響きがあるが、これはハガキを使った架空請求詐欺だ。全国の消費・国民生活センターのホームページによると、「今年3月下旬から急増している」という。「注意して」ではなく「無視して」と呼び掛けている。 それにしても、なぜ手間も郵便代金も掛かる“ハガキ”なのか。 「公的機関からの連絡はメールや電話ではなく、ハガキか封書です。犯人は、『今時ハガキで架空請求は来ない』という誰もが持ちがちな先入観に狙いを定めているのです」(法曹関係者) 詐欺ハガキは、ポスティングでランダムに投函されるチラシのようなものではなく、住所と氏名が記載され、完全に“個人宛”になっている。これも被害者側を信用させるアイテムだ。 「少し前に『告発通知詐欺』というものがありました。架空NPO法人を名乗り、アダルト画像などの購入者に『告発通知』を送付するというものですが、これは購入先に配達先住所を教えていますから、当該名簿が詐欺グループに漏れていたということも考えられます。昨今は『個人情報は漏れるもの』と考えた方がよく、身に覚えのないものは無視することです」(同) 手口はこうだ。「未納分訴訟最終通知書」などと書かれた下には「未納料金に関する訴訟が起こされたので期日までに電話しないと、あなたの財産を差し押さえますよ」といった内容の文章が記載されている。 そこに電話する→「弁護士に相談しなさい」と指示される→弁護士を名乗る人物が出てきて「裁判の取り下げに使うからコンビニでプリペイドカードを買え」→プリペイドカードを購入しカードの番号を伝えてしまう。これで万事休すだ。 プリカは詐欺グループにとって足が付きにくい。そもそも「訴訟通達」「最終通知」など、考えてみれば意味不明の記述が満載。 人を疑わない性格の人は気を付けるべし。
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社会 2017年12月07日 14時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 どうなる石油価格
資源エネルギー庁が発表した、11月20日時点のガソリン価格は、前週よりも1円80銭円高の140円10銭となった。10週連続の値上がりで、およそ2年3カ月ぶりの高値となっている。 為替がやや円安の水準で安定していることに加え、OPEC(石油輸出国機構)が減産を継続する見方が強まっていることが、原油価格高騰の背景になっているのだが、もう一つ重要な要因が、中東地域での政情不安が拡大していることにある。 石油の価格は、ニューヨークのマーカンタイル取引所で行われている石油の先物取引価格を基準に決まっている。マーカンタイル取引所の取引は、大部分が実需ではなく、投機となっているから、石油の最大の供給地である中東の政情の不安さが、価格高騰に結び付きやすいのだ。 第一の中東不安は、サウジアラビアだ。サウジアラビアは西側の同盟国なので、民主国家と思われがちだがそうではない。初代アブドルアジズ国王の後、初代の王子たちが次々に国王に就任し、現在が7代目のサルマン国王になっている。絶対権力者が世襲されているのだ。 しかし、兄弟で国王を受け継ぐという方式に、変化がもたらされようとしている。サルマン国王が息子のムハンマド皇太子に国王を禅譲しようとしているのだ。 初代国王には52人の息子がいて、そのうち36人が王位継承権を持っている。当然、まだ国王になっていない王子たちは、国王の座を第三世代に移すことに賛成しない。そこで、ムハンマド皇太子が政敵である王子たちを、汚職を理由に次々に逮捕させているのだ。これまで石油を安定供給してきたサウジの政情が混乱する可能性を、投機家たちは、むしろ囃し立てている。 もう一つの中東不安は、イランにある。サルマン国王とムハンマド皇太子は、中東の盟主争いをするイランを敵視している。そこに、トランプ発言が重なってしまった。 トランプ大統領は10月13日のホワイトハウスでの演説で、米国など主要6カ国と結んだ核合意を、イランが順守しているとは「認めない」と発言したのだ。これに対し、イランが猛反発し、両国の緊張関係が高まったのだ。 ただ、石油価格の高騰が今後も続くのかどうかについては、見方が分かれる。焦点は、米国がどれだけ輸出を増やしてくるかだ。米国は、平時は石油の輸入が輸出を上回っているが、シェールオイル生産で積み上げた在庫を吐き出せば、短期的には輸出超過が十分可能だ。米国のシェールオイルの生産コストは、1バレル40ドル程度と言われているから、いまの60ドル程度の相場で売れば、大儲けができる。 もちろん、トランプ大統領がそれを狙って、中東危機を煽っているとは断言できないが、北朝鮮問題でも、危機を煽ることで、日本や韓国に米国製の兵器を大量に買わせることに成功した。だから、中東危機が、米国の利益になることを知っている可能性は、十分あるのではないだろうか。 ただ、石油価格の高騰は、ガソリンや灯油だけでなく、電気代から、農産物、水産物の価格にまで波及するので、今後の中東情勢の行方には、十分な注意が必要だろう。
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社会 2017年12月06日 10時00分
大家は『浅草寺』仲見世商店街「家賃1万5千円から25万円に値上げ」で年末商戦に悲鳴
家賃1万5千円から25万円の値上げに浅草・仲見世通り商店街が凍り付いた。東京都台東区の浅草寺が、仲見世通りの店舗家賃を引き上げる通達を出し、商店街振興組合がこれを拒絶。折り合いがつかず商店に動揺が走っている。 台東区は、外国人観光客の増加もあって、年間観光客数が今年初めて推計5000万人を突破したという。 「これは、ほぼ浅草地区を訪れた観光客の数字。仲見世商店街には人形焼屋や煎餅屋、雑貨屋など、外国人を引き付ける浅草らしい店が軒を並べている。それら各店舗の恩恵に預かっているとも言えるんです」(台東区関係者) その商店街の所有者は、土地が浅草寺で建物が東京都となっていたことから、昔から平均的な賃貸料は約10平方メートルで月15000円程度と破格の安さだった。 「そのため、どの店も賃貸権を手放さなかったのですが、高齢化が進み手放す店主も出てきた。そんな中、ある店舗の賃貸権が1億円以上で売却されたという噂が流れたんです。そこに目を付けたのが悪徳不動産ブローカーで、“賃貸権あります”などと売り歩きをし始めているんです」(同) そんな詐欺まがいの話まで飛び交っていたところへ、今年7月、以前から東京都と浅草寺が進めていた建物の売却話が、約2000万円で浅草寺が買い取ることで決定。大家になった浅草寺は、9月に家賃を約16倍にまで値上げすると通達したのだ。 「つまり、10平方メートル約25万円になる。地元の不動産屋の算定では妥当な額なのですが、そうなれば廃業しかねない店も出てくるため、振興組合が反対しているのです」(商店主) 浅草寺側は“16倍”について「正式決定ではない」としているが、1月からの値上げは間違いなさそうだという。 店主にとっては死活問題であると同時に、商品の値上げが観光客離れにつながる可能性もあり、年末年始にかけて、仲見世通り“店子”の悲鳴が聞こえてくる。
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社会 2017年12月05日 10時00分
やっぱり橋下頼み 松井一郎代表続投に日本維新…ではなく『日本不信の会』の揶揄
「代表選をするべきではなかったのか」との声がいまだに聞こえてくる。日本維新の会が11月25日、大阪市内で臨時党大会を開き、松井一郎代表(大阪府知事)の続投を決めたが、党内にはギクシャクした雰囲気が漂っているという。 「原因は、やはり衆院選の敗北。何より、希望の党との連携を見誤ったことが大きい。橋下さんというカリスマを中心にして作り上げられた維新にしてみれば、同じタイプとも言える小池さんが、ここまで早く失速するのは誤算だった」(維新関係者) 衆院選前に松井氏、小池百合子・希望の党特別顧問(当時)、大村秀章・愛知県知事が地方分権の共通構想として発表した「三都物語」はすぐに空中分解。維新と希望の連携で安倍自民に圧力をかけるはずが、今や補完どころか追従勢力と言われる始末。 こうした一連の動きをリードしていたのが松井氏となれば責任論が出るのも当然だが、丸山穂高衆院議員が代表選の必要性を唱えると橋下徹前代表が「ボケ!」を連発し、ツイッターでの場外乱闘にまで発展した。 「丸山氏も一度は離党届を提出したが、馬場(信幸)幹事長が党大会でも話していたように突き返したという。これは、党内が人材不足に陥っている証しとも取れます。松井氏に関しても同様で、吉村洋文・大阪市長を推す声があるものの、時期尚早で代わる人がいない。そうした状況の中、橋下氏のツイッター発言に反発する声は燻り続けており、“もっとやれ”と焚きつける声も聞こえてくるほどです」(在阪政治記者) 立て直しには時間がかかりそうだが、こんな最悪のケースを話す関係者もいる。 「維新が目指す本丸は、大阪都構想。松井さんも来年秋に住民投票を行う気ではいるが、これでまた否決となれば、組織は散り散りバラバラになる」 結局は、橋下頼みということか。日本維新…ではなくて、もはや『日本不信の会』じゃないかと揶揄する声が聞こえてくる。
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