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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 地震保険料は正しいのか

 熊本地震では、約3000もの住宅が全半壊した。地震により住宅を失い、被災者生活再建支援法が適用された場合には、支援金が支払われる。ただし、その金額は、建物を取り壊して新たな住宅を建設した場合の最高額でも300万円にとどまる。とても住宅を再建できる金額ではないのは一目瞭然だ。しかも、住宅ローンを借りている人は、地震で家を失っても、ローンの返済はそのまま残ってしまうのだ。
 一方、火災保険は、地震による損害を補償してくれない。地震による損害を回復しようと思ったら、どうしても火災保険への加入が必要なのだ。

 地震保険は、法律にもとづいて損害保険会社と国が共同で運営しており、その保険料は、地震調査研究推進本部の地震被害予測シミュレーションにもとづいて算定されている。そのため、保険料は建物が立地する都道府県によって大きく異なっている。
 例えば、耐火構造(主としてコンクリート造り)の建物に1000万円の地震保険をかけた場合、年間保険料は5段階に分かれる。岩手、長野、福岡など最も安い地域では6500円だが、東京、神奈川、静岡など最も高い地域では2万200円と、実に3倍以上の格差がついているのだ。
 地震の発生確率が違うのだから仕方がないと思われるかもしれない。しかし、近年の大地震を振り返ると、中越地震のあった新潟県と阪神大震災のあった兵庫県は、保険料が下から二番目の8400円、東日本大震災で大きな被害を受けた福島県と今回大地震がきた熊本県は、ともに最も安い6500円なのだ。
 甚大な被害をもたらした熊本大地震で明らかになったことは、結局、地震は日本中、どこで発生するのか分からず、発生確率の予測など、とてもできないということなのではないか。
 だとすると、いまの地震保険料は、不当な料金差別をしていることになる。

 また、地震保険のもうひとつの問題点は、火災保険とセットで加入しなければならない点にある。しかも、火災保険の30%から50%の範囲内で保険金額を決めなければならないということだ。
 つまり、地震保険をかけていても、住宅を再建する資金の最大半分までしか保険金が出ないということなのだ。

 そうした問題点を解消するため、地震保険を補完する保険を民間が発売している。例えば、SBI少額短期保険が、地震補償保険というのを出していて、最大900万円まで加入できるようになっている。
 900万円の保険に加入した場合の非木造住宅の年間保険料は、東京都3万5780円、岩手県2万5820円となっているが、注目すべきは、その地域間格差だ。なんと保険料の格差は36%に過ぎないのだ。
 同じ地震に備える保険でありながら、国が主導する地震保険は格差が3倍で、民間は36%というのは、いくらなんでもおかしくはないだろうか。

 いま、日本は地震の活発期に入っていると言われているから、地震保険に加入する必要性が高まってきている。にもかかわらず普及率は3割ほどだ。地震保険の普及を進めるためにも、公平な保険料がいくらなのか、しっかりした議論が必要だろう。

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