とは、食品業界に詳しいジャーナリストの窪田順生氏だ。
カレーチェーン『CoCo壱番屋』を展開する壱番屋(本社=愛知県一宮市)の廃棄カツが産廃業者から横流しされた事件は、図らずも食品業界の闇を浮かび上がらせた。
壱番屋が不正転売の事実を発表したのは1月13日。それによれば、昨年9月に製造されたビーフカツに最大8ミリの合成樹脂片が混入していたため、約4万枚の廃棄を、愛知県稲沢市の産廃業者『ダイコー』に委託したという。
「しかし1月11日、『CoCo壱番屋』のパート従業員が、スーパー『Aマートアブヤス神守店』(愛知県津島市)で壱番屋チェーン以外に供給されるはずのないビーフカツが“CoCo壱番屋のビーフカツ”と銘打ち5枚1袋398円で売られているのを発見。同スーパーの春田店(同県名古屋市)でも昨年12月から、少なくとも計約5400枚が売られていたことが判明したのです」(全国紙社会部記者)
これについて当初、『ダイコー』は7000枚を堆肥処分し、3万3000枚を麺類製造業『みのりフーズ』(岐阜県羽島市)に転売したことを認めていたが、事はそれだけに留まらなかった。
「壱番屋が昨年8月と10月に『ダイコー』に廃棄を委託したビーフカツが約6万3000枚に及んだのです。そのうち、愛知県内の弁当工場11カ所で使われたのが約1万3000枚、愛知・岐阜・三重のスーパーなど20店舗以上で冷凍食品や惣菜として販売されたのが約1万4000枚で、計約2万7000枚は消費者に渡ったとみられている。しかも、在庫を差し引いた約3万枚については行方が分かっていないのです(1月17日現在)」(同)
愛知県警では『ダイコー』やその関係先が廃棄物と知りながら食品と偽って転売していたとみて、廃棄物処理法違反の疑いで捜索し流通経路の調べを進めている。しかし壱番屋が『ダイコー』に廃棄を委託していたのは、ビーフカツのほかチキンカツやロースカツ、ナポリタンソース、ラーメンスープなど多種に渡る。さらに昨年、一昨年となると、異物混入などで『ダイコー』が廃棄を委託されたカツは約59万枚にも上るため、全容解明には時間がかかりそうだ。
そんな中、今回の事件で注目すべきは転売先の『みのりフーズ』の存在。同社からは、壱番屋の商品以外の冷凍食品も大量に見つかっているからだ。
「『みのりフーズ』は、いずれも『ダイコー』から入手したと説明している。大半が賞味期限切れで、岐阜県は、これらも横流しされた廃棄品の可能性があると見ています。見つかったのは、ビンチョウマグロのスライス49箱や、焼き鳥のモモ136箱、骨付きフライドチキン20箱などです」(地元記者)
つまり、『ダイコー』に廃棄を依頼していた壱番屋以外の食品関連会社の商品が、同じ転売ルートをたどって消費者に出回った可能性が高いわけだ。
窪田氏が言う。
「廃棄処分されるはずだった食品を産廃業者がスーパーや弁当屋、精肉店に卸すのはよくある光景で、今回の事件は氷山の一角です。産廃業者は費用だけ取って横流ししているように見えるが、それに加えて裏がある場合もある。たとえば、廃棄委託元が産廃業者からキックバックを受けている疑い。業界では当たり前のことなんです」
『みのりフーズ』の場合、実質経営者が報道陣に対し「2年ほど前から数回『ダイコー』から壱番屋のカツを仕入れた」と説明、いずれも廃棄物とは知らされなかったと言い、『ダイコー』側から転売の際、「CoCo壱番屋」と書かれた箱から別の箱に詰め替えるよう指示されていたと語っている。
さらに、疑うことはなかったのか? の質問に、
「無料なら、そりゃそういうものだと思うんですけど、きちっとダイコーさんには、ココイチさんに金払わないといけないので、至急金くれと。で、ちょっと遅れると、もうきつい催促があるんですよ。当然、ココイチさんから出てるというふうにしか思っておりませんから」
何やら責任転嫁したい胸の内が透けて見えるようだが、
「今回の事件は、たまたま複数の仲介業者がいて廃棄ビーフカツがスーパーにたどり着いたというより、卸すルートが完全に出来上がり、常態化していたということだと思います。いずれにせよ、関係先はすべて調べるべきでしょう」(前出・窪田氏)
一方、食品業界関係者は次のように語る。
「仲介業者のようなところは、お互いにどこから仕入れたのかは教えない。結局、何も事情が把握できないまま不正転売に加担している場合も多いのです」
“食品ロンダリング”の絵を描いたのは誰なのか。
今回の事件を機に、その闇を解き明かして欲しいものだ。