紳助に関する評価というと、なぜか最近は賛否の“否”のほうの意見を圧倒的に目にするのだが、それはどうしてなのか。
まず、彼の冠番組における企画の安易さが指摘されている。『クイズ!ヘキサゴンII』はもちろん、最近は『行列のできる法律相談所』に対しても批判が集中。なにしろ、アウトロー界の超大物が、自伝で紳助批判をしているというのだから穏便じゃない。
「カンボジアに学校を建てるんだとか言ってたが、あれほど気分が悪くなる番組もなかった」
「自分やタレントの描いた下手な絵をバカ高い値段で売り付けて」
「自分の善意を見せびらかす奴のことを、チンピラにもなれない“小チンピラ”って言うんだ」
もう、批判が湯水のように湧き出る。しかし正論に聞こえなくもないので、否定派にとってはあまりにも心強い。
もうひとつの問題点は、彼の暴力的なところだろう。記憶に新しい“東京03恫喝事件”の他に、“女性マネージャー暴行事件”もあった。だが、これらも氷山の一角。
「麒麟の田村さんが、観覧番組の収録中に紳助さんにボコボコにされたって話やけど、アレは血みどろだったらしいで…」(某吉本若手芸人)
曰く、番組の収録中に、麒麟がロケに出たVTRをタレントや客を含めた皆で観ていた真っ只中。そのVTR内で、紳助をネタに田村が笑いをとった場面を見て、紳助の怒りが爆発。番組収録の中盤にもかかわらず、田村に暴行を加え始めたらしいのだ。
こういった紳助の行き過ぎた行動、最近になってよく耳にすることが多いのだが、以前はそんなことはなかったのだろうか。
思えば、業界内における“紳助バブル”が巻き起こったキッカケは、松本人志が紳助に対する尊敬の念を表明してからのこと。94年のベストセラー『遺書』からである。それ以前の紳助と言えば、玄人受けはするが一般視聴者からの評価はそこまで高くなかった芸人。だから、今ほど矢面に立つ必要もなかったのだ。
よって、彼の悪癖(暴力癖)が表沙汰になることもなかった。なぜなら、彼のスキャンダルに今日ほどのニーズがなかったからだ。実は、過去にも細川ふみえとのトラブルなどがあったのだが、ニュースとして騒がれることもなく収束している。
彼のヤンチャぶりは、ビッグになるにつれてピックアップされるようになっただけなのかもしれない。
ところで、前述の“麒麟田村・暴行事件”について。情報を教えてくれた若手芸人が語ってくれた紳助評は、
「客前でそんなことしといて、スタジオの空気は最悪になるやん。でも、最終的には挽回してお客さんを沸かすねん。やっぱ、スゴいわ」。
芸人内からのリスペクトは、昔も今も変わらず多い。
「自分より格下にはめっぽう強い」と揶揄される紳助が、30年近くも傍若無人でいられるのは、そのスキルあればこそなのかもしれない。