「元々、キャバクラ嬢になったのも変身願望があったからなんですよね」
キャバクラ嬢を始めた者の中には収入に惹かれたという意見が多いが、郁子の場合はそうではなかった。彼女は学生時代からクラスで目立つ生徒ではなく、友人も少なかった。そんな彼女は同年代の友人と遊ぶことよりも、二次元の世界に没頭。そしていつしか別の人間に生まれ変わりたいという変身願望が高まっていったという。
「コスプレにも興味はあったんですけど、私は先にキャバクラを始めたんですよね。キャラクターの衣装を色々揃えなければならないコスプレに対して、キャバは求人誌から電話するだけだったんで気持ち的に楽だったんです」
そうして変身願望を叶えるため、夜の世界に飛び込んでいった郁子だったが、キャバの世界だけでは我慢できなくなったという。やがて彼女はコミケなどのイベントでコスプレを披露するようになる。
「コスプレイヤーになった時、お金にはならないけど私にはこっちの方があってるかもと思ったんです。やっぱりキャバクラでの接客はストレスも溜まるし、大変ですから」
接客業の限界に気付いた彼女はキャバクラの世界を棄て、自身の願望を叶えてくれるコスプレだけに専念することを決めた。
「キャバの時はそうでもなかったんですが、コスプレをしているときだけは現実を忘れられるんです。元々変身願望があってキャバを始めたので、今後はコスプレでその願いを叶えていこうと思います」
現在はイベントでコスプレを披露しながら、昼間は事務員として都内で働いているという。
(文・佐々木栄蔵)