菊池 約20年ぶりのプロレス復帰だったけど、船木はプロレス心を忘れていなかったな。本当にいいセンスをしているよ。殴り合い、関節の取り合いはパンクラスよりスピードアップしていたもんな。
永島 俺が知っている船木は新弟子の頃で、実際に新日本で試合をしているのを見たことはまりないんだよね。ただ、評判は耳に入ってきていた。顔もいいし、体もまだまだ大きくなるし、新日本の将来を支える男になるという話で、猪木も同じような評価をしていたからね。
吉川 デビュー当時、未来の星といわれた船木が、プロレス界を照らす星として戻ってきましたね。
永島 もともとそういう資質を持っていたわけだから、あれくらいのことは出来て当然だと思うし、武藤はしっかり見定めていたと思うよ。武藤も天才的な感性を持っているからね。
菊池 セミの三冠戦も見応えがあった。体幹の太い選手がぶつかりあえば迫力が出るよ。あれが本当のプロレス。諏訪魔を見直したよ。あれだけの試合をやれば十分。技のミスもあったけど、迫力でカバーして、見終わったあと、爽快感があった。小橋は高感度100%で小島といい戦いをしたし、カズのジュニア選手権も素晴らしくて、本当にいい大会だった。
吉川 8月は両国国技館での試合が例年になく多く、新日本のG1決勝、DDT、そして全日本とどの大会も超満員の入りで、この夏は不況といわれているプロレス界が底力を見せましたね。
永島 俺が一番驚いたのはDDT。超満員になるとは思わなかった。ドラゴンゲートも3月に両国で大会を開いたけど、DDTとは狙いと目的が少し違っていて、今回のDDTの成功は女子プロを含むインディーにすごく勇気を与えたんじゃないかな。
菊池 みんないい大会で、いい味を出していた。G1は一つのシンボルで、DDTはお祭りでお客を喜ばせ、全日本は試合で見せて、大満足だった。ああいうムードの大会が続けばプロレス界は盛り上がってくる。
吉川 両国大会を成功させた団体に共通する点、独自色が強いことですね。
永島 地道な努力の積み重ねが花開く時期にきているのかもしれない。
<プロフィール>
菊池孝(きくち・たかし)史上最長のプロレス評論家
永島勝司(ながしま・かつじ)本紙統括プロデューサー
吉川義治(きっかわ・よしはる)元週刊ゴング編集長