そんなキャバ嬢の本質を知ってか知らずか、中には、わざと女同士の闘争心を燃やさせて、それを見て楽しむという悪趣味なお客様もいる。
「この前俺が来たときって誰に付いてもらったんだっけ?」
「そうだそうだ、あゆに付いてもらったんだ! じゃあ、今日はあゆ以外の子で場内指名入れちゃおうかな」
そう嬉しそうに話す会話が、隣のボックスに座っていた私の耳にも入ってきた。わざと聞こえるように言ってるんだと思うと、正直、イラッとした。でも同時に、どうすれば、自分だけを見てもらえるのかということを真剣に考えてた。
誰かひとりに絞る気がないお客様なんて気にせず、他のお客様のことだけを考えればいい。
それでもこうして気なってしまうのは、やっぱり、自分と他のスタッフの子を比べられているから。女のプライドを折られたみたいで、気分が悪いから。絶対に私が一番だって思わせてやると闘争心が燃えてくるから。…なんだと思う。
そうしていると、段々、そのお客様だけを追いかけている自分に気が付く。それが仕事としてなのか、ひとりの女としてなのかは、わからない。
ただ、やっぱり追いかけられることに慣れているキャバ嬢にとって、自分が追いかけるという立場に立たされると、急に普通の女の子にもどってしまうんだなと思った。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
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