彼女達を知るものは村にはおらず、恐らく産まれてすぐに狼の群れに遭遇、どうしてかそのまま狼達に育てられ、今まで行動してきたものと推測された。その証拠に彼女たちは自分の足で立つことができず、筋も強ばって四つん這いでの行動しか出来なかった。また、言葉も発することができず唸るような声や吠え声、遠吠えをする有り様で当初は意志疎通すら困難だったという。また、狼達と過ごしていたせいか彼女らの身体的特徴も変化しており、暗闇で目が赤く光る、爪や顎の筋肉が異常に発達している、常人より犬歯が伸びている、食物は専ら生肉を好んだなどの記録が残っている。
彼女らはシング牧師の庇護のもと、次第に人間社会に馴染み人間らしさを取り戻しつつあったが、数年後に病死してしまったという。
現代でも適切な保護・教育を受けられず育った子供の事例として取り上げられる『アマラとカマラ』だが、この話の信頼性については大きな疑問符がつけられる。まず、彼女たちの保護された状況に齟齬が見られること、彼女たちの身体的特徴のうち一部はシング牧師や彼の近縁者からしか報告されていないこと。また人間が狼達と共生するには生物学的な壁があるため不可能とする説もある。例えば狼は日に50キロもの距離を群れで走って移動する。これに野生動物に比べ遥かに身体能力に劣る人間の乳児ないしは幼児が同行できるとは考えられない、などだ。
更に彼女たちを納めたスチール写真に『年代や月日、場所が違う筈なのに背景や彼女たちの背格好が酷似している』ものが複数存在している事も判明している。
この事から、現在では彼女たちは先天性の身体・精神的障害を患い棄てられた孤児であり、野生児の背景は教会への援助を得るためにシング牧師らが誇張したものがそのまま伝わってしまったと考えられている。
(山口敏太郎事務所)