夢を海外へつなぐためにも、先輩を超えてみせる。先週のヴィクトリアマイル、ウオッカが7馬身差圧勝を演じたが、今週はブエナビスタがそれ以上のパフォーマンスを見せつけるつもりだ。
「変わらなくきているのが何より。今より良くなる必要もないからね。3週前から時計を出したのは桜花賞と一緒。動きは本当にいい」。この馬を語るとき、気負いや不安はかけらもない。いつものように、松田博調教師は静かにうなずいた。
根底には、ゆるぎない信頼と自信がある。桜花賞がその思いをさらに強くさせた。ゆったりとスタートして道中は泰然自若。4コーナーでもコースロスを承知で大外へ持ち出した。それでも直線入り口で前がふさがり、一瞬、仕掛けが遅れた。そのスキにレッドディザイアが一気に伸びており、普通なら万事休すの局面だ。しかし、そこからあっさりと差し切った。
時計や着差などでは測れない。これぞ次元が違うという強さだった。今回は距離が2400メートルに延びるが、師は不安を一蹴、距離延長をアドバンテージとまで言ってのけた。
「持って生まれた心肺機能がすごい。だからもともとは二千以上を中心に使いたかった。これまでは桜花賞を見据えてマイル中心に使ってきたけど、それでもマイルに合わせた競馬はしなかった」
急がせず、常に後方からゆったり走らせていたのはそのため。ブエナビスタが本当の強さを発揮するのはこれからだといいたげだ。
師にとってオークスはコスモドリームで初めてGIを勝ち、ベガも圧勝した思い入れの深いレースだ。まして、今年はブエナビスタが秋の凱旋門賞に一次登録を済ませており、同じ2400メートルの今回、問題は勝ち方になる。
「勝てば、凱旋門賞へ行くことになるだろう。東京の二四は力通りに決まるし、積み重ねてきたものをすべて証明できる舞台だと思っているんだ。国内で勝てなければ、向こうで勝てるわけないしな」
史上11頭目の牝馬2冠。それはフランス行きのチケットになる。
【最終追いVTR】栗東DWで6F78秒9→64秒9→51秒1→38秒7→11秒9(強め)。6F標で併走馬を2馬身後方から追走。4角手前からピッチを上げ、直線入り口で射程圏に。追われてからは外にいた他厩舎の馬が邪魔になり、進路を内に切りかえたが、終いの切れ味は相変わらず豪快。馬体にも柔らかみがあり、抜群の仕上がりだ。