前走の秋華賞では宿敵レッドディザイアを猛然と追い上げたが、ハナ差届かなかった。しかも4コーナーで外へと斜行して、ブロードストリートの進路を妨害。着順が入れかわり、3着に降着となってしまった。3冠の夢が打ち砕かれたばかりではない。降着という不名誉な足跡まで残してしまった。
「前走は道中でゴチャつく位置にいたしな。早めに外へ出せれば、結果は違ったかもしれん。まあ、それでも、降着は上(決勝審判)が決めることやからしゃあない」と松田博調教師は振り返った。
あの一戦だけで、ブエナへの思いが揺らぐことはない。相変わらず、泰然自若としている。
そう思えるのは、幸い馬自身にダメージがまったくなかったからだ。むしろこの中間は、蟻洞(ぎどう)の影響で調整が遅れた前走時に比べると至極順調にきている。4日の1週前追い切りも栗東Wコースで5F68秒8。この馬らしい豪快な動きを披露した。
「春はレース後の反動が激しく、疲労を取り除くのに時間がかかった。でも今はまったくそんな面がない。前走後もレースの翌週の土曜日に時計を出せたくらい。これもひと夏越した成長の証しやろ」
もともとの能力の高さに加え、それを支える肉体も理想の姿へと進化してきた。しかも今回の舞台は外回りの2200メートル。同じ京都でも、窮屈だった秋華賞の内回り2000メートルとは全然違う。まぎれなく力を発揮できる設定だ。
何より前走で味わった苦い経験を無駄にしたくない。もう一度、春に見せた強さを見せつける。
「今度は爪の不安もないし、成長の跡も感じられる。伸び伸び走れる京都の外回りも合うやろう。いずれまたレッドディザイアと対決できる機会があるはずやから、その時を楽しみにしているんや」
ジャパンC挑戦を決めた宿敵はここにはいない。しかし秋華賞の降着騒動で、因縁を残したブロードストリートが虎視たんたんと勝利を狙っている。まずは目の前の敵を完膚なきまで倒す。ライバルとの再戦で胸を張るためにも、負けるわけにはいかない。