フランスに遠征した前走の凱旋門賞は10着に終わった。欧州競馬独特の濃密な馬群にもまれ、直線ではまったく余力が残っていなかった。すでに、年内で引退が決まっている。世界制覇の野望は幻に終わったが、海を渡った経験がすべて無駄になったわけではない。
「とにかく馬がリラックスしている。それが何よりだね」と高橋成調教師はうなずいた。シャンティの森の優雅な雰囲気になじんだことで、サムソンにこれまでなかったゆとりが生まれた。加えてレースの激しいしのぎ合いを経て、心身ともに野太くなった。
「海外遠征の疲れは見られない。着地検疫をした東京競馬場を含めてしっかり乗り込んできたからね。ケイコの動きもすごく良くなっている。万全の状態で送り出せる」
これまで猛烈な時計を連発してきたサムソンだが、中間は目立ったタイムを出していない。それも、裏を返せば帰国後の調整に余裕があった何よりの証拠だ。
実際にトレーナーも「一時は秋の天皇賞が視野に入っていたぐらい。無理をせず目標をここに絞ってきたからね」と悠然と構えている。
先週、主戦の武豊騎手が骨折した。今回、鞍上には昨年の宝塚記念以来となる石橋守騎手が座る。ダービー馬が3代そろった夢舞台で、ダービーを制したコンビが復活するのも何かの縁だろう。
「ダメで降ろされたわけじゃないし、彼自身ももう一度乗りたいと思っていたはず」。かつて、自身もトップジョッキーだった高橋成師は石橋の気持ちを代弁した。
2年前、叩き上げで頂点を極めたコンビが、同じ舞台で意地を見せる。
【最終追いVTR】6F標識で1秒6後方から併走馬を追いかける形でスタート。直線で馬体を併せると、1秒以上ちぎって豪快に先着した。追い出されてからの反応、伸びとも上々で、ラスト1F11秒9でフィニッシュ。海外遠征後の疲れは皆無で絶好調だ。