影野氏が続ける。
「歌舞伎町は韓国人や中国人、もしくは若いカップルだらけになりました。ゴジラの登場もあって、このところ田舎からやってくる人たちも増えた。『歌舞伎町は危ない』といわれているのに、わざわざ(笑)やってくる。まさに歌舞伎町は、怖いもの見たさに人がやってくるサファリパークのような場所です。キャッチにしても、昔は脱サラで一攫千金を夢見て30歳を超えてもキャッチになりたがる人がたくさんいたもんですが、今は半グレが何も考えずに『ひとまずキャッチでも』『キャッチくらいしかできない』という“でもしか”キャッチが増えています。僕らがぼったくりをしていた時代は、客が数十万円を払ってショックを受けているところへ『せめてものプレゼントです。ヘネシーをどうぞ』と酒をおごってショックを和らげたものです。まあ『ヘネシーです』といっても、トリスに味の素をかけて味をヘネシーっぽくしたバッタものですが(笑)。昨今の“第2次”ともいえるぼったくりは、すぐに暴力を振るったりと、まるで余裕がないのも特徴ですね」
シャレのような話ではあるが、シャレにならないのは毎晩、交番の前で店と客が「話が違う」ともめていることだ。もはや新宿署から伝わる話では「夜の電話を取るのが鬱になってきた」という署員もいるほど「ぼったくられた」という電話が頻発しているのだ。
歌舞伎町のぼったくり事情に詳しく、自ら『歌舞伎町ぼったくり被害相談室』を開設している青島克行弁護士(うみとそら法律事務所)が語る。
「そもそも、まともな店が客ともめるわけがないのです。警察がもっと裁量を発揮して、まず客と店との連絡先を交換させ、ひとまずは帰すという対応をしてくれればいいのですが、警察が『民事不介入』と言って『当事者同士で話せ』と突き放しているのが問題です。条例違反の点についても、防犯カメラの活用をすれば客引き行為の立証だってできるはずですし、料金トラブルが毎晩のように起こるのは、店側が料金説明義務を果たしていないからだと警察が断定してくれればいいのです」
ぼったくるアホウにぼったくられるアホウ…。
「ぼったくりに遭ったら、もうキャッチのセリフからずっと録音しておかないと証拠にはなりませんよ。警察も、被害届を受理するのが面倒だから書類にしたくない。話し合ってくれと帰すのは、面倒を避けたいだけです」と影野氏も言う。
ぼったくりを「人生勉強になった」と見るか、それとも「人生最悪の出来事」と見るか…。歌舞伎町には今宵も“甘く危険な香り”が漂っている。