先ごろ、経産省が発表した開始から1カ月間の実績は、政府が今年度(7月〜来年3月)に見込んだ分の約2割にあたる。政府が買い取り価格を高めに設定したことが功を奏し、中でも太陽光の買い取り申し込みは44万キロワットで、全体の約8割を占めた。その買い取り価格は1キロワット当たり42円と、風力約23円、地熱約27円などに比べても高く、「原発事故を千載一遇のチャンスと捉えた面々が群がった格好」(関係者)だ。
経産省は事業者別の内訳を公表していないが、バブル謳歌の“横綱”がソフトバンクの孫正義社長であることは疑う余地がない。前出の関係者は冷ややかだ。
「価格決定に際し、専門家委員会では『1キロワット30円台半ばが適切』との意見が出たのですが、結局は要望を丸呑みした。要は民主党政権に強力なパイプを持つ孫さんの意向には逆らえなかったのです」
既にソフトバンクグループが運営を決定した発電所は、北海道から九州まで10カ所の太陽光と、島根県の風力1カ所を合わせて約23万キロワットに及ぶ。
ところが、一般にはあまり知られていないが、電力会社は「安定供給に支障をきたしかねない」などの正当な理由があれば買い取りを拒否できる特約が与えられている。現に北海道電力が「買い取り枠が満杯」を理由に風力の買い取りを拒否した“実績”がある。
この事態に戦々恐々としているのもまた孫社長で、主流派の財界人は「電力会社とのデスマッチが見もの」と高みの見物を決め込んでいるのだ。