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私はこうしてお客様に落とされた 〜一条こころ・キャバ嬢(20歳)〜

 「好きなものを選んでいいよ」と中嶋さんが言うので、私は迷うことなく、シャネルJ12の時計を指差した。

 「遅くなっちゃったけど、誕生日おめでとう」

 私の誕生日に出張が入ってしまった中嶋さんが、少し遅めの誕生日プレゼントといってくれたの。

 「わあ〜、嬉しい! …ありがとう」

 私がお礼を言うと、中嶋さんは嬉しさを抑えられなかったのか、満面の笑みをこぼした。
 …まさか、あと数時間もすれば、この時計が現金に変わるなんて、夢にも思ってないんだろうな。

 この世界にいると、高級ブランドの時計やバッグをもらっても、ありがたみを感じなくなってしまう。麻痺しちゃってるのかな? 自分でも20歳でこの金銭感覚は、さすがにマズいなとは思うんだけど…。

 でも、高級ブランドをもらえるのを当たり前だとは思っていないの。ただ、ほとんどのお客さんが「キャバ嬢には高級ブランドをプレゼントしておけば間違いない」といった感じでくれるから、多分、嬉しさが半減しちゃうんだろうな。なかには、何回かプレゼントしただけで、自分の女扱いをしだすお客さんもいるからね。

 そんな私だけど、今までに贈られたプレゼントの中で、本当に嬉しいと思えたものがひとつだけあったのね。

 19歳でこの世界に入った私を初めて指名してくれたお客さんが、ある日突然、私に着物をプレゼントしてくれたの。誕生日でもないのに…っていうか、何で着物? と、不思議に思うことだらけだったから、どうして? って、お礼よりも先に聞いてみたんだけど。

 「こころがキャバ嬢として一人前になったとき、きっと、銀座のクラブで働きたいとか、自分の店を持ちたいって気持ちになると思うんだ。そのときに着物の一枚も持ってないと恥ずかしいでしょ?」

 そう言われてもらった着物は、まだ、一度も袖を通すことなく、部屋のクローゼットにしまったままになっている。

 別に、着物を贈られたことが嬉しかったわけじゃないの。ただ、ブランド物をプレゼントすればいいと考えてる他のお客さんと違って、私のことを考えて贈ってくれたプレゼントだったから嬉しかったの。そのとき、初めてお客さんに対してキュンとしてしまったんだよね。

取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。その後、これまでの経験を活かすため、フリーランスへ転身。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
http://ameblo.jp/lisa-ism9281/
https://twitter.com/#!/LISA_92819

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