弁護士が多いこと自体は、市民の選択肢が増えるために好ましいことである。しかし問題は、質の低い弁護士が増えることである。マンガ『クロサギ』原案の夏原武氏は「モンスター弁護士」という言葉を用いて警鐘を鳴らしている。弁護士が高潔な正義の味方というイメージは、急速に過去のものとなりつつある。その一例として、レンタルオフィスで開業する法律事務所もある。
ある法律事務所をインターネットで検索する際、住所やファックス番号で検索すると、同じ住所、同じファックス番号の様々な企業が続々とヒットする。複数の法律事務所が同じ住所、同じファックス番号になっている例もあった。これは同じレンタルオフィスを借りているためである。送付されたファックスは、レンタルオフィスのスタッフが処理する仕組みになっている。
法律事務所を開業するとなると、敷金・礼金や内装などで、莫大な費用が必要になる。その点、レンタルオフィスで開業するならば、初期費用が安く済み、経済的ではある。レンタルオフィス側でも、法律事務所を活用事例に列挙しているところもある。
しかし、法律事務所が他企業または他の法律事務所と同じファックス番号を使用することは問題が大きい。裁判所や相手方とのやり取りにはファックスが多用される。同じファックスを使用するならば、他者が内容を確認できてしまう可能性がある。
弁護士には高度な守秘義務が課せられている。当然のことながら、レンタルオフィスと秘密保持契約を締結しているだろうが、それで弁護士に課せられる守秘義務を満足できるかが問題である。
(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)