唐突な発表の裏に、国際仲裁裁判所で係争中の独フォルクスワーゲン(VW)との提携解消問題があるのは間違いない。実は修会長、株主総会で「諸手続はすべて完了した。結論が出次第、開示する」と待ちの姿勢をアピールした。ならば社長交代はそのタイミングに合わせても良かったはず。なぜ待ち切れなかったのか。
「御大(修会長)は1月で85歳になった。もっと早く譲っても良かったのですが、線が細い御曹司ではVWに圧倒されかねない。そこで裁判所の判断が出るのを待って交代しようと腹を固め、気持ちを奮い立たせてトップに君臨してきたのです」(スズキ関係者)
修会長はVWとの裁判が昨年暮れ、遅くても今年の3月ごろまでに決着するとにらんでいたようだ。現に発行済み株式の20%相当を上限とする自社株の取得枠を設定していた。VWが保有する19.9%の自社株買いシフトに他ならない。
「御大自身がVWとの資本提携を実行した立場ですから、何とか判決が下りるまでとの思いでいました。しかし、ここまで長くなると待ちきれない。事業計画にも影響します。まあ、社長ポストを譲ったとはいえ、本人はCEO(最高経営責任者)を兼務しますから、経営体制の根幹は変わらない。すなわち、依然としてギネスブックものの“老骨にムチ”が続くのです」(同)
たとえVWとの問題が有利に決着したとしても、今度は米ビッグ3の一角だったクライスラーを飲み込んだイタリアのフィアットが食指を動かしている。そんな輩を相手に御曹司社長がどう対抗するか。修会長は気が気ではないだろう。