同社は「5年間は売買できないが、株価が上がっていれば普通株に転換して売却できるのはもちろん、たとえ株価が下がっていても発行価格で買い取る」という世界でも珍しい元本保証を“売り”にした新型株の発行を計画している。その実現のためには6月16日の株主総会で3分の2の賛成票を得る必要があるが、投資助言会社の評価が「賛成」「反対」に分かれて「事前の票読みが難しい」(市場筋)状況だ。
現在、トヨタの個人株主は11%程度。上場企業の平均約20%を大きく下回っていることから、新型株を発行することで長期保有の個人株主を増やしたいのが本音。総会で承認されれば7月にも5000万株発行し、将来的には発行済み株式の5%まで新型株を増やす計画だという。そのためには総会での承認が絶対条件だが、大手証券役員は「個人を含む既存株主は『われわれにメリットがあるのか』と思っており、彼らが納得しなければ否決される場面もある」と警告する。
「トヨタはグループ企業の保有比率が高い。そんな持ち合い構造の利点を生かせば、会社側の主張が通る確率が高くなる。しかし、透明度の点で疑問符が付くのも特徴でした。まあ、本当に個人株主を増やしたいならば、この透明性や投資の魅力アップに加えて、現在100株の単元株を10株なり1株に改めれば済む話。そうすれば投資家は飛び付きますよ」(大手証券マン)
トヨタは今年3月、株主層の厚みを増すため個人投資家向けのイベントを開いた。その延長にあるのが新型株だ。世界一からの転落が現実味を増してきた今、御曹司社長が総会を前にやっと“個人ファン”獲得の重要性に目覚めたのだとしたら皮肉である。