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虎の変革「金本監督は勝ちに行く」(育成編)

 金本知憲監督(47)が真っ先に挙げたチーム改善点は『チーム盗塁数』の少なさだった。2015年シーズンはトータルで「48」。リーグトップの巨人は「99」。つまり、半分以下である。得点能力を挙げるには機動力を高めなければならない。一発(本塁打)に頼らない野球をするためにも、「走る意識」は選手に持たせるべきである。
 「秋季キャンプでは走塁練習に時間を割いていました。走塁の順番待ちをしている選手に『休んでる暇はない』と喝を入れ、走塁の状況判断の大切さを唱えたりしていました」(スポーツ紙記者)
 しかし、どの球団監督も機動力の重要性は分かっている。なのに、機動力がペナントレースのメインにならないのは何故か…。相手チームのバッテリーによる牽制やクイックなどが発展したせいもある。いちばんの理由は、選手に「走る意識」を定着させた後の明確なビジョンがないからだろう。

 「常に選手にプレッシャーを掛けて行く」
 この金本知憲監督のコメントは興味深い。
 03年シーズンのことだった。阪神移籍1年目のこの年、選手・金本は主に3番を任されることが多かった。その当時の2番バッターは赤星憲広だった。前年まで2年連続盗塁王のタイトルを獲得した韋駄天である。当然、ベンチは盗塁を期待する。このとき、3番・金本は「ファーストストライクを見送る」と約束していた。
 赤星からすれば、プレッシャー以外の何者でもなかった。クリーンナップの金本がファーストストライクを捨てることの重要性は分かっている。その考えが「絶対にスチールを成功させなければならない」とするプレッシャーとなったが、同年、赤星は61の盗塁数をマークし、後に5年連続盗塁王の記録を打ち立てていく。当時を知るチーム関係者は「ファーストストライクで盗塁を決めなければ」の重圧が赤星を成長させたと見ている。
 監督・金本はこうしたプレッシャーを各選手に与えながら育てていくのではないだろうか。

 その機動力アップの教育を一任されたのは、高代延博ヘッドコーチである。今さらだが、高代コーチは91年ドラフトで広島入りしたときの金本監督の指導者でもある。高代コーチは“教え子の参謀”ともなったわけだが、
 「走塁練習でいちばん手こずったのが金本だった」
 とも一部メディアに話していた。
 その言葉通りだとすれば、「苦労して覚えたことこそ、最大の武器になる」ということだろうか。

 金本監督の現役時代を知る若手は「怖かった」とも話していた。近寄りがたい雰囲気も醸し出していたのだろう。しかし、それは対戦投手の得意球で仕留められたら、チームの士気にも影響するとし、常に自身にプレッシャーを掛けていたからだという。球団の指揮官選びは決して話題作りではなかったようだ。

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