■交流戦に入っても好調を維持
5月30日の対オリックスバファローズ戦。6回を投げ切り被安打1、奪三振は実に9個と今季のベストともいえる内容を残し、勝ち星こそつかなかったものの、この日もしっかりとゲームを作っている。
ランナーを背負った場面でも四番の吉田正尚、長打力のあるT-岡田を三振に切って取るなど要所をキッチリと締めてみせた。
ストレートの最速は142Km、多少の荒れ球もあり打者に的を絞らせない組み立ては登板数を重ねるごとに精度を高めてきている。低めにも決まる変化球の切れも上がってきており、ここ2試合はそのまま数字にも表れてきていると言っていいだろう。
■観ていて胸が膨らむ松坂のピッチング
反面、球数は114球とやや多く、打者の初球からキャッチャーのミットが大きく逆をつくこともしばしば。4つの四球もあり終始盤石の投球とは言えないまでも、「松坂らしさ」とでも表現できそうな、若干の不安定さと隣り合わせのピッチングも不思議と楽しめてしまう。さらには、めったにキャッチャーのサインにも首を横に振らずに投げ込むテンポの良さ、本人がこだわりをみせるワインドアップモーションなども観ている側が心躍らせる要因か。
6月を迎え日々暑さが増していき、投手陣の台所事情も変わってくるであろう季節、先発ピッチャーとしてこれまで以上に松坂がマウンドに立つことを求められるかもしれない。さらには、オールスターファン投票でも中間発表では2位の票数を獲得しており、中日ファンのみならず次の登板を心待ちにしている人々も少なくない。やはり、みんなが松坂大輔を待っていた。
交流戦初登板となったこの日、投球回数6回の内、5度、最終バッターを三振で仕留めている。球審のアウトのコールとほぼ同時にマウンドを降りる姿からは、風格とプライドが伝わってきた。胸を張り、表情を変えずにベンチに消えて行くその光景もまた、変わらない松坂大輔らしさといえるかもしれない。(佐藤文孝)