「今は卒業のことで頭がいっぱいなので、これから振り出しに戻って考えたい…」。歯に衣着せぬ発言で知られる石井の言葉に、普段の力強さはみじんもなかった。
一部報道で5日に総合格闘家転向を報じられたことから、大みそか総合格闘技への参戦が急浮上。6日に都内で開かれた全柔連専門委員会の会議後に吉村和郎強化委員長から「お前の人生だから好きにすればいい」「(ロンドン五輪の構想には)ない。ここまで騒ぎになったらいらん」などと三行半を下されたこともあり、この日はプロ転向を正式表明するものとみられていた。
しかし、ふたを開けてみればトーンダウンの感が否めない会見となった。まず総合格闘家への転身について「興味みたいなものはありますが、いまは学生なので卒業を第一に考えている」。さらにはDREAMや戦極といった総合格闘技団体との接触についても「ない」と一切を否定した。
プロ転向を先送りした格好となったが、そこには恩師の思惑が見え隠れする。会見に同席した斉藤仁全日本監督は「前期は合宿、五輪後も色々な祝賀会があり、とにかく授業に出ていない。これからは卒業モードでやれということです」。これまでの石井の「卒業第一」発言は監督指令だったことを暗に示した。
総合転身を言及したことから完全に四面楚歌になってしまった石井だが、それでもMMAマットへの思いは揺るぎない。プロ転向の時期こそ「いつ行くかはまだはっきり決めていない。時間があるのでゆっくり考えたい。焦っても仕方がない」と明言を避けたものの、今後は「指導者として柔道界に残るというのはない」ときっぱり。格闘家転身を見据えて退路を断つハラが固まっていることも示唆した。
プロ宣言はいつになるのか。現段階では卒業後としているが、その一方で早期転向宣言のウルトラC案もある。テレビ関係者は「卒業を待たなくても、早ければ11月中旬だってあり得る。11月上旬の後援会と大学内部の祝勝会を終え、全柔連の強化指定から外れたタイミングで、という可能性は十分」と指摘する。11月15、16日に行われる講道館杯後に全柔連の強化指定選手が確定するタイミングで強化指定選手から除外されれば、急転直下の正式表明は否定できないという。
それだけではない。「本人が、大みそかも出るって言えば問題ない。だって大みそか(のイベント)に出ても卒業には支障ないですし、そもそも学校休みですからね」(前出・テレビ関係者)。いまだ大みそか参戦の可能性は完全に消滅していないというのだ。
現時点でのプロ入りは回避したものの、一連の騒動により石井の去就には、さらに注目が集まった。
○一問一答
会見での石井は神妙な面持ちでビッグマウスも封印。終始歯切れが悪かった。
−−吉村委員長のロンドン構想から外れてるという発言をどう思う。
「自分は来年の世界選手権に出ないで休みながらやるって言ってきました。世界選手権に出なかったりしたら、自然とロンドン(五輪)もなくなる。自分もそう思う」
−−父親は何といっているのか。
「父親も卒業することを第一に考えているので、授業も出るようにしていてます」
−−総合格闘技の練習は?
「あんまり。いや、全然やってないッス」
−−格闘技団体からのオファーは。
「全然ないし、話も聞いてないです」
−−転向はいつごろか。
「30(歳)で行くかもしれないし、それは分からない」
−−来年ならある?
「それは考えていない。卒業をまずして、それから振り出しに戻って柔道を本当にやりたいかどうか、これから考えてみようと思う」